「未知の絶景」は、どこにあるのか。まずは地元の人に聞いてみることにする。しかし、「未知の絶景を探しているんですが教えてもらえませんか?」そんな風に聞いても、いい答えが返ってくる気がしない。声をかけあぐねていると、「どこからきたの?」そう話しかけてくれたオジさんがいた。
室蘭の地球岬でのこと。8月の北海道には日本全国からありとあらゆるナンバーの車が集まっていて、観光地の駐車場ともなれば、その半分以上が道外の旅人たちで埋め尽くされる。それが日常でもあるのだろう。地元の方たちは実に気さくに声をかけてくれるのだ。話を聞くと、オジさんは室蘭の製鉄所で働いていて、休日はドライブがてら地球岬によく来るという。「この辺りで一番好きな場所を教えてもらえませんか?」話の流れで聞いてみると、「俺が働いてる工場が一望できる場所があるよ」そんな答えが返ってきた。
地球岬から道道919号線をトッカリショ方面へ走ること10分。現れたのが写真の絶景。工場夜景の近未来的ロマンとは対照的に、まるで遺跡を見ているような歴史の“重み”を感じる。それもそのはずで、室蘭には日本でも2番目、3番目に歴史のある製鉄所や製鋼所が今も現役で動いているのだという。「鉄が関係する物なら何でも作ってるよ」オジさんの声にも、ひとつの仕事を長年続けてきた人だけの“重み”があった。
----地元の人に聞いてみる。それが絶景の近道。----
ライター 志賀章人(しがあきひと)