埼玉県川口市
令和の今、ベーゴマブームが起きていると噂の埼玉県川口市。
その真相を確かめに、ブームの震源地とされる川口市郷土資料館に向かった。
目を疑うような熱気が、そこにはあった。
最寄りのICから【C3】東京外環自動車道「川口中央IC」を下車
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2024年のクリスマス、珍しいものをサンタクロースにリクエストしている子どもたちが埼玉県川口市にいた。
「これ、煙突に入んないわよね」とほほ笑むのは、日本唯一のベーゴマメーカー、日三鋳造所で働く篠原さん。指さした先には、シートが張られた大きな樽があった。ベーゴマをまわす舞台となる「床(とこ)」だ。篠原さんによると、大人でも一抱えもあるこの床(5500円)をクリスマスプレゼントに求めている子どもが、12月初旬の取材時点ですでに3人いるということだった。
45年生きてきて、ベーゴマの床という言葉を初めて知った僕には想像がつかない。クリスマスといえば、普段、親にねだってもなかなか買ってもらえない特別なものをサンタクロースに頼むものじゃない? それがゲームや最新のおもちゃではなく、床? クリスマスの朝、枕元にドーンッと床が置いてある様子を想像すると面白い。
篠原さんとの間で床の話題が出たのは、理由がある。日三鋳造所のベーゴマ販売店で話を聞いていたら、小学校2、3年生ぐらいの少年がひとりでお店に入ってきて、「床ください」と言ったのだ。彼が買いたかったのは、500円の「ミニ床」。篠原さんに1000円を渡し、500円を受け取ると、「お釣りは(お母さんに)返す!」と元気に宣言して、ホクホク顔で帰っていった。
目の前でミニ床が売れ、クリスマスには本格的な床がプレゼントされる。取材を始めて15分ほどで、僕は川口市を席巻していると噂のベーゴマブームの熱気を肌で感じた。
篠原さんにお礼を告げて別れた後、ベーゴマ販売店から徒歩30秒ほどの距離にある川口市郷土資料館を訪ねた。ベーゴマブームの震源地と呼ばれているそこで、僕は火花を見た。比喩ではない。激しく回転するベーゴマとベーゴマがカチッとぶつかり合った瞬間に飛び散る火花を目にしたのだ。目にもとまらぬ手さばきでベーゴマを投げ入れ、その火花を見せてくれた郷土資料館職員の井出祐史さんとベーゴマ名人の中島茂芳さんが、ブームの火付け役。