続いて、体格がいい少年に声をかける。彼はその日、最年長の中学3年生で、半年前、弟の付き添いで郷土資料館に足を運んだところ、井出さんに誘われてベーゴマを手にした。その日にたまたま大会があり、準決勝進出。「次は優勝してやる!」と熱くなった。その後の大会で一度優勝。今は「知らない人と対戦すると見たことのない投げ方をする人がいたりして、こういうやり方もあるんだって発見もあって面白いですね」と語る。
再び、お気に入りのベーゴマある? と聞いてみた。すると彼は、いくつもあるコレクションのなかから10個の点で「G」と書かれたベーゴマを取り出した。
「中島さんと何度か勝負をして、たまたま勝てたんです。そしたら、『初めて勝ったならあげるよ』って中島さんからいただきました」
中島さんとは、ベーゴマ名人・中島茂芳さんのこと。このベーゴマの見た目は、地味だ。でも、彼にとっては名人に勝利した記念品であり、名人から譲り受けた宝物でもあるのだろう。それは、「いただいた」という言葉に表れている。ちなみに、「G」と刻まれたベーゴマは中島名人のオリジナルで、「なかじま」の「じ」を表しているそうだ。「Z」や「J」じゃなく「G」の理由は聞き忘れた。
この日、彼は弟とお母さんと一緒に来ていた。お母さんは「年齢関係なく、大人も一緒に遊べるのがいいですね。郷土資料館に行くと言われたら、気持ちよくいってらっしゃいと言えます」と目を細めた。