井出&中島コンビが起こしたベーゴマ旋風は、川口市の境を越え始めている。日本玩具文化財団の主催で、2025年1月から全国各地のイオンで開催されるベーゴマとベイブレードの魅力を伝える展示と体験会「ベイブレード25周年記念 コマの魅力展」で、井出さんは展示のコーディネートとして抜擢された。
また、海外でベーゴマを売りたいという企業にも、井出&中島コンビが手を貸している。その企業はさらなる海外展開を計画しており、ふたりに「ベーゴマを広めるイベントとして丸の内で講師をしてほしい」という相談まで届いているそうだ。
ほかに、超人気の某テーマパークとコラボする話も進んでいるという。話がどんどん大きくなっていくなかでも、井出&中島コンビの軸足はあくまで川口市に置かれている。井出さんのスマホには、学校でのベーゴマ授業の予定がぎっしりと書きこまれていた。
意図せずして教員という天職から離れた井出さんだが、「今は川口中に教え子がいる感覚」だという。教員への諦められない思いを胸の内に抱えながらも、今は自分の想像を超えて広がっていくベーゴマブームに新たな夢を託す。
「川口市って、一部外国人住民とのトラブルでニュースになっているじゃないですか。でも、日本語がまるでわからない外国人の子どもたちも、ベーゴマを回せるようになると、ワーッと喜んで日本人の子どもたちとハイタッチするんです。ベーゴマを回していたら、子どもたちは友だちになれる。ベーゴマは国境を超えるんですよ。だからね、世界平和っていうわけじゃないけど、言葉とか国籍も関係なく、川口の子どもたちを集めてベーゴマ大会をやりたい。埼玉スタジアムで、『今年の川口のてっぺんを決めるぞー!』って。それで1年生が優勝しちゃったりしてね」
僕が「その夢、最高ですね」というと、井出さんは中島名人に目をやった。
「中島さんとふたりで学校を回り始めて、ほんとにいっぱい奇跡が起きてるからね。望んでたら、叶うかもれない」
中島名人は、「そうだね」と力強く頷いた。