未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
120

北海道苫前郡

北海道の北西に浮かぶ焼尻島。この島の名物は、世界一にして幻と評される羊の肉。普段は高級レストランでしか食べることができないこの羊肉が、年に一度のお祭りで供される。その味を確かめに、東京から電車、飛行機、バス、船を乗り継いで島に向かった。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.120 |24 August 2018
  • 名人
  • 伝説
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  • 穴場
東京都杉並区

最寄りのICから【E62】深川留萌自動車道「留萌大和田」を下車

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#1フレンチの巨匠の言葉

焼尻島で飼われているサフォーク種の羊

 「焼尻島で飼われているサフォーク種の羊の味は、世界一だ」

 2012年の秋頃、某紙の仕事で日本を代表するフレンチのシェフ、三國清三さんにインタビューする機会があった。北海道の食材が持つポテンシャルがテーマで、その時に最も強く印象に残っているのが、この言葉だった。

 焼尻島と羊について調べてみると、がぜん興味をかき立てられた。人口200人弱の焼尻島で、イングランドのサフォーク州原産の足と顔が黒いサフォーク種の羊が500頭ほど放牧されているとある。人間より羊のほうが多い島は日本でも焼尻島ぐらいじゃないか?
 そして、その肉のほとんどが日本の名だたる高級レストランに直接卸され、なかなか一般の市場に出回らないことから、「幻の羊肉」と言われているそうだ。

 世界一にして幻。

 母親が北海道出身で、子どもの頃からジンギスカンに代表される羊のお肉が大好物の僕にとって、これほど食欲をそそる言葉もない。さらに調べを進めると、焼尻島では毎夏、「焼尻めん羊まつり」なるものが開催されていることがわかった。年に一度、2日間だけのこの祭りで「幻の羊肉」が販売され、その場で焼いて食べることができるという。

 もちろん、都内のレストランでおしゃれに食べるのも良いと思う。でも、人間より羊が多い島で青空バーベキューをするほうが、より魅力的に感じた。焼尻の羊がなぜそれほど高く評価されるのか、ググればあれこれ書いてあるけど、やっぱり実際の現場を見てみたい。

 いつか必ず!……と決意してから、あっという間の6年。ついに仕事とプライベートのタイミングが合い、8月4、5日に開催された「焼尻めん羊まつり2018」に向かった。

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未知の細道 No.120

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。