未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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小路を歩けばサムライが、堀を覗けばカッパがいる?

~金ヶ崎要害と城内諏訪小路重伝建地区〜

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.91 |25 May 2017
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#92017年の妖怪会議

昨年の「幽霊・化け物・妖怪会議」の様子。 撮影:市川寛也

 この「旧坂本家侍住宅」は、金ケ崎まちづくり研究会が開催する町歩きツアーや講座、「幽霊・化け物・妖怪画展」などのイベントの開催拠点でもあるのだ。

 実は重伝建地区は選定されてからよりも、それを保全し続けていくことの方が、ずっと難しい。千葉さんは、そのためにはここに住む人たちが、この町並みの面白さやここの歴史についてさらに深めて、地域住民が住み続けたいと思う町づくりをすることこそが大切だと考えている。それは時間がかかることかもしれないが、地域から愛される町であれば、自ずと外からここにやってくる人たちも増えていくだろう、そんな考えからだった。

 町歩きツアーや「幽霊・化け物・妖怪画展」も、ここや近隣の人々がこの町を楽しみ、この町の歴史を深く知るために、始まったものだった。これまでの出品者の作品をまとめて旧坂本家侍住宅で展示販売している画集も、すでに11冊にものぼる。パラパラとめくると、菊を咲かせて通る人を驚かせたという「羽沢のお菊」という狐や、「かまど神」など、この辺り特有の妖怪たちが描かれている。中には携帯やパソコンに住み着いた「文字化け」という、ずいぶん現代的な妖怪もいるんだな……と思ったら、これはなんと、大学生だった市川さんの作品だった!

 展覧会は、最初は近隣の人たちの出品のみで始まったが、5年前に市川さんが展覧会情報をキャッチして飛び入り参加した時のように、今では遠くからやってくる妖怪マニアたちが出品することもある。

 さらに市川さんがここをフィールドワークするようになって、メインイベントがもうひとつ増えた。それがこの展覧会期間中に行われる、その名も「幽霊・化け物・妖怪会議」だ。市川さんもメイン講師の一人となって、妖怪をテーマに参加者に講義したり、語り合ったりするものだ。

 そういえば「世界の妖怪事情」をテーマに公開講義したこともありましたねえ、と市川さんと千葉さんは笑って教えてくれた。(なんと妖怪は、日本以外にもいるらしい……!)

 今年の「幽霊・化け物・妖怪画展」は8月2日から27日まで、「幽霊・化け物・妖怪会議」は、8月26日(土)に開催される。ぜひ情報をチェックして、参加してみてはいかがだろうか。

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未知の細道 No.91

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。