この「旧坂本家侍住宅」は、金ケ崎まちづくり研究会が開催する町歩きツアーや講座、「幽霊・化け物・妖怪画展」などのイベントの開催拠点でもあるのだ。
実は重伝建地区は選定されてからよりも、それを保全し続けていくことの方が、ずっと難しい。千葉さんは、そのためにはここに住む人たちが、この町並みの面白さやここの歴史についてさらに深めて、地域住民が住み続けたいと思う町づくりをすることこそが大切だと考えている。それは時間がかかることかもしれないが、地域から愛される町であれば、自ずと外からここにやってくる人たちも増えていくだろう、そんな考えからだった。
町歩きツアーや「幽霊・化け物・妖怪画展」も、ここや近隣の人々がこの町を楽しみ、この町の歴史を深く知るために、始まったものだった。これまでの出品者の作品をまとめて旧坂本家侍住宅で展示販売している画集も、すでに11冊にものぼる。パラパラとめくると、菊を咲かせて通る人を驚かせたという「羽沢のお菊」という狐や、「かまど神」など、この辺り特有の妖怪たちが描かれている。中には携帯やパソコンに住み着いた「文字化け」という、ずいぶん現代的な妖怪もいるんだな……と思ったら、これはなんと、大学生だった市川さんの作品だった!
展覧会は、最初は近隣の人たちの出品のみで始まったが、5年前に市川さんが展覧会情報をキャッチして飛び入り参加した時のように、今では遠くからやってくる妖怪マニアたちが出品することもある。
さらに市川さんがここをフィールドワークするようになって、メインイベントがもうひとつ増えた。それがこの展覧会期間中に行われる、その名も「幽霊・化け物・妖怪会議」だ。市川さんもメイン講師の一人となって、妖怪をテーマに参加者に講義したり、語り合ったりするものだ。
そういえば「世界の妖怪事情」をテーマに公開講義したこともありましたねえ、と市川さんと千葉さんは笑って教えてくれた。(なんと妖怪は、日本以外にもいるらしい……!)
今年の「幽霊・化け物・妖怪画展」は8月2日から27日まで、「幽霊・化け物・妖怪会議」は、8月26日(土)に開催される。ぜひ情報をチェックして、参加してみてはいかがだろうか。
松本美枝子