さて二の丸から金堀沢という堀を渡って、要害を出る。二の丸から堀を渡る道は、かなりの高低差があって階段をぐっと下らなければならない。千葉さんが「殿様の住まいと一般人との間には、これだけの差があったんだぞ! と町歩きしながら言うことにしています」と笑いながら言う。
千葉さんたち、金ケ崎まちづくり研究会では、今年の3月まで毎月、保存地区の町歩きツアーを開催していた。今年度からは、長年続いた町歩きにかわって毎月の公開講座を行っている。「これから市川さんもゲストとして金ケ崎や東北の妖怪について講義してもらいますからね!」と、千葉さんと市川さんは、今後の講義内容の計画を歩きながら熱心に話し合っていた。
そして金ケ崎まちづくり研究会のボランティアによる町歩きは、今後も希望があれば随時受け付けるとのことなので、是非情報をチェックしてみてほしい。
「この堀には、もしかしたらカッパが住んでいるかもしれないんですよ」と千葉さんと市川さんは、にっこりして教えてくれた。金ケ崎には「釜淵のカッパ」という伝説が残っている。江戸時代の釜淵は、ここから少し離れたところにあった、と言われている。言われている、というのは果たしてどういうことかというと、実は北上川は江戸時代から比べてだいぶ流れを変えている。かつて釜淵があった場所は、おそらく現在の金ヶ崎神社あたりになっている。だから、カッパも金堀沢あたりに移動してきているんじゃないかなあ、と二人はニコニコしながらいうのであった。あの辺りとか、カッパが座りやすそうでしょ、と千葉さんは川の中のコンクリートの小さな堰堤を指さしながら、笑っていた。
松本美枝子