未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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小路を歩けばサムライが、堀を覗けばカッパがいる?

~金ヶ崎要害と城内諏訪小路重伝建地区〜

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.91 |25 May 2017
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#6釜淵のカッパ

 さて二の丸から金堀沢という堀を渡って、要害を出る。二の丸から堀を渡る道は、かなりの高低差があって階段をぐっと下らなければならない。千葉さんが「殿様の住まいと一般人との間には、これだけの差があったんだぞ! と町歩きしながら言うことにしています」と笑いながら言う。

 千葉さんたち、金ケ崎まちづくり研究会では、今年の3月まで毎月、保存地区の町歩きツアーを開催していた。今年度からは、長年続いた町歩きにかわって毎月の公開講座を行っている。「これから市川さんもゲストとして金ケ崎や東北の妖怪について講義してもらいますからね!」と、千葉さんと市川さんは、今後の講義内容の計画を歩きながら熱心に話し合っていた。

 そして金ケ崎まちづくり研究会のボランティアによる町歩きは、今後も希望があれば随時受け付けるとのことなので、是非情報をチェックしてみてほしい。

要害から階段を下っていくと、金堀沢が出てくる

「この堀には、もしかしたらカッパが住んでいるかもしれないんですよ」と千葉さんと市川さんは、にっこりして教えてくれた。金ケ崎には「釜淵のカッパ」という伝説が残っている。江戸時代の釜淵は、ここから少し離れたところにあった、と言われている。言われている、というのは果たしてどういうことかというと、実は北上川は江戸時代から比べてだいぶ流れを変えている。かつて釜淵があった場所は、おそらく現在の金ヶ崎神社あたりになっている。だから、カッパも金堀沢あたりに移動してきているんじゃないかなあ、と二人はニコニコしながらいうのであった。あの辺りとか、カッパが座りやすそうでしょ、と千葉さんは川の中のコンクリートの小さな堰堤を指さしながら、笑っていた。

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未知の細道 No.91

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。