さて田切先生へのインタビューから9日後、私は再び日立に来ていた。今度は雪がまだかなり残る高鈴山ハイキングコースを通って、金山という山中にいる。 雪の登山道には所々、土がひっくり返って、ぐちゃぐちゃになっている場所がある。まだそんなに時間は経っていないだろう、イノシシが朝ごはんのミミズを探して土を掘った跡だ。それを踏み越えて、今度は5億年前の「化石らしき」ものがある地層へと向かっているのだ。
前回のインタビューの最後に、これからの研究テーマはなんですか? と私が聞くと、「やっぱり5億年前の地層の中から化石を見つけないとね」と田切先生は即座に言った。 溶岩の変成岩の中から化石を探すのは難しいが、石灰岩の中からはウミユリや海綿のような生物の化石が、やっと見つかり始めているという。しかしこれらはカンブリア紀以降も存在する生物なので、もしカンブリア紀だけに生きていた生物の化石が見つかれば、もっと地層の年代が特定されてくる。しかし、なにしろ5億年前に何が生きていたのか、未だに誰もよくわかってはいない。だから「生物らしき」化石が出ても、その種がわかるまで、というより、その種を決めるまでに何年も時間がかかる、気が遠くなるような作業なのだ。
しかし何はともあれ、茨城県北ジオパークのガイドのグループである「ジオネット日立」の会員たちとともに、しばしば化石を調査しに出かけているのだという。 それは私も行きたい! 「ぜひ次の調査日に同行させてください!」と先生にお願いして、私はこうしてまた、日立の山道を歩いているのであった。今日はジオネット日立の塙さんと及川さんも一緒だ。
松本美枝子