未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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日本列島の歴史は日立の地面から始まった?!

カンブリア紀地層の5億年の旅を解き明かす

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子、田切美智雄 (一部提供)
未知の細道 No.61 |20 February 2016
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#7再びカンブリア紀の地層へ 化石を探す旅

さて田切先生へのインタビューから9日後、私は再び日立に来ていた。今度は雪がまだかなり残る高鈴山ハイキングコースを通って、金山という山中にいる。 雪の登山道には所々、土がひっくり返って、ぐちゃぐちゃになっている場所がある。まだそんなに時間は経っていないだろう、イノシシが朝ごはんのミミズを探して土を掘った跡だ。それを踏み越えて、今度は5億年前の「化石らしき」ものがある地層へと向かっているのだ。

前回のインタビューの最後に、これからの研究テーマはなんですか? と私が聞くと、「やっぱり5億年前の地層の中から化石を見つけないとね」と田切先生は即座に言った。 溶岩の変成岩の中から化石を探すのは難しいが、石灰岩の中からはウミユリや海綿のような生物の化石が、やっと見つかり始めているという。しかしこれらはカンブリア紀以降も存在する生物なので、もしカンブリア紀だけに生きていた生物の化石が見つかれば、もっと地層の年代が特定されてくる。しかし、なにしろ5億年前に何が生きていたのか、未だに誰もよくわかってはいない。だから「生物らしき」化石が出ても、その種がわかるまで、というより、その種を決めるまでに何年も時間がかかる、気が遠くなるような作業なのだ。

しかし何はともあれ、茨城県北ジオパークのガイドのグループである「ジオネット日立」の会員たちとともに、しばしば化石を調査しに出かけているのだという。 それは私も行きたい! 「ぜひ次の調査日に同行させてください!」と先生にお願いして、私はこうしてまた、日立の山道を歩いているのであった。今日はジオネット日立の塙さんと及川さんも一緒だ。

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未知の細道 No.61

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。