未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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日本列島の歴史は日立の地面から始まった?!

カンブリア紀地層の5億年の旅を解き明かす

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子、田切美智雄 (一部提供)
未知の細道 No.61 |20 February 2016
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#4日立の地面は、日本列島の始まり

それではさっそく5億年の石を見に行きましょう、と田切先生は立ち上がった。先生は郷土博物館を出ると、そのすぐ上にある、かみね公園に向かって歩き始めた。徒歩にして1分。
かみね公園は日立の街と海が一望できる高台にある。遊園地と動物園も併設されており、日立市の観光コースでは外せないスポットだ。ちなみに日立市は私の住む水戸市から、常磐道に乗って1時間弱。中でもここの動物園は、私が大好きな場所のひとつである。たまに車を走らせて、ゾウやライオンを見に来るのが、ちょっとした楽しみなのだ。

さて動物園を見下ろすところまで坂をあがると、公園内には幾つもの岩がむき出しになっていることに気づく。「ほら、これはみんな5億年前の石の露頭(野外で地層や岩石が露出している場所のこと)なんですよ」と田切先生は、こともなげに言うではないか。
ええ?! なんと、こんなに簡単に日本最古の地層が見られるとは……。というよりも、以前から目に入っていた公園の岩は実は露頭であって、ディスプレイされたものではなかったわけだ。5億年前の地層は、山奥でしか見られないものと、勝手に思い込んでいた私は、やや、めんくらってしまった。

また公園内には日立鉱山の創業者・久原房之助や日立製作所の創業者・小平浪平などを讃える石碑がいくつかある。これらも5億年前の花崗岩を基礎にしたり、露頭をそのまま使うなどしている。どれも、みな、あの東日本大震災でもビクともしなかった、という。
かみね公園の中には、このように5億年前の花崗岩の露頭がいくつもあり、説明板で案内されている。まずはここに来れば、誰もが気軽に日本最古の地層を観察することができるのだ。

しかし、どうして5億年前の地層が、今の日立にあるのだろうか? そしてなぜ日立にしかないのだろうか?その疑問に、田切先生がこう答えてくれた。

かみね公園頂上展望台下の5億年前の花崗岩の露頭
かみね公園内の根本甲子男翁顕彰碑。5億年の花崗岩だ。
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未知の細道 No.61

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。