職人たちで活気付く善光寺門前の裏エリア。それは、どこからはじまったのか。
最初の移住者の一人と言われるのが増澤珠美さん。かつては地域の人との信頼関係をゼロから築き、今では様々なイベントの企画運営を通して移住した人と地域の人をつないでくれる存在なのだという。
話が変わるようではありますが、善光寺門前エリアでは演劇が盛んです。多くの人たちが劇団、ユニット、プロデュースなどいろんな形で参加して日々、公演が行われているのです。僕が訪れた日も、増澤さんが主催する演劇が開催されていて会場は超満員の盛況ぶり。
その会場こそが「ネオンホール」。この運営に携わったことをキッカケに、増澤さんの「善光寺門前暮らし」がはじまりました。
ネオンホール10周年を機に、増澤さんは活動の拠点を「ナノグラフィカ」に移します。外観はカフェに見えますが、その奥には企画編集室があるという。
「どんなにいい演劇やライブも、その日だけで終わってしまうので、もう少し違う形で残したり、発信したりできないかなという気持ちがありました。当時はフェイスブックとかもなかったし、紙で表現しようと思って。それで編集室を立ち上げて、「街並み」という小冊子を作りました。長野の身近な町の風景の写真集というコンセプトで、市や区よりもさらに小さな一丁目、二丁目レベルの“街並み”にスポットをあてて、路地とか建物とか、そこでの人の営みとか、そういった様子を偏った目線で紹介しています。創刊号から10年で45冊ぐらい出しています」
廊下を使ったギャラリーでも月替わりの企画展が行われていて、町の人が作った心のこもった作品が並んでいます。
増澤さんは「善光寺びんずる市」という手作り品の市の実行委員も務めていて、今では150店舗が出店するイベントに育て上げました。
「この地域では、月の半分ぐらい何かしらのイベントをやってる気がします。ナノグラフィカだけでも日本酒の会、演劇の会、俳句の会、山に登ってコーヒーを飲む会とか、色々あります。こういう会に出席しながら半年も住めば、町中の人とつながれる。着物散歩の会に参加すれば、年配の方たちとも知り合えるし。そういう多世代をつなぐ催しがあるんです」
ナノグラフィカの入り口には、演劇をはじめとする町の人たちの様々な活動のチラシがぎっしり。仕事だけでなく、家庭だけでもなく、やりたいこともやり続ける。町の人たちのそんな活気が伝わってくるように思えるのでした。
増澤さんは「空き家見学会」なるイベントも運営していて、タッグを組んでいるのはTIKU-の『中澤さん』のお話にも出てきた『倉石さん』だという。
ライター 志賀章人(しがあきひと)