未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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自分のお店を持ちたいあなたに。 個性100%の“小”店街をめぐる旅

文= 志賀章人
写真= 志賀章人
未知の細道 No.53 |20 October 2015
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#7お客さんの顔を見て作る“オーダーメイド”ピザ。

具材や見た目が大きく変わるわけではありません。それは、ほんのわずかなさじ加減。
食べる人が年配の方であれば、高温でやわらかめに焼いて、塩やオイルも少なめにあっさりと。家族連れであれば、どこに視点を合わせるか。子どもが中心であれば、バランスのとれたやさしい味わいにしつつ、最後に振るチーズを少しだけ変えてみたり。

「お客さんを見てどんなピザを作るか考えたいので、お店の入口にキッチンを作ったんです」

通り沿いにあり、道行く人からも顔が見えるピザ屋さん“TIKU-(チクー)”。
店主の中澤雄介さんは、仙台での七年の修行期間を経て独立。自分の気持ちはもちろん、生産者の方の想いや、一緒に働く仲間の想いを一枚に込める。それがピザだと学んだと言います。

「生地を練るときも、トッピングするときも、カットするときも、この“手”を通して込めていると実感できるのがピザなんです。修行時代、師匠のもとに僕を含めて三人の弟子がいたんですが、同じ素材で同じように作っても味が違うんですよね。塩っ気とかそういう意味ではなくて、やさしい味わいだったり、深みがある味わいだったり、不思議なんですよね。作った人が出る、そういうことだと思うんです」


一番人気はクワトロフォルマッジで、有名シェフでも手に入れるのが難しいとされる“吉田牧場”のチーズを使わせてもらっているという。

「修業先でも使わせていただいていた日本最高のチーズなんです! 独立の際に吉田さんに手紙を書かせてもらったんですが、ありがたいことに自分たちが食べる分を分けてくださっていて……」

生産者の方やお客さんを語るときの中澤さんは、その言葉のひとつひとつに敬意や愛情が込められていて、その人柄はもちろん、“ピザ柄”も表しているようです。

普通のお店は当日の朝に仕込む生地に関しても、中澤さんは2日前から仕込みはじめ、ゆっくりじっくり育てていくそうです。
「生地に合わせた生活ですね」と笑いながら、手をこねて見せる中澤さん。そのしぐさに僕は、笑うことができませんでした。見てマネできるような手つきではないのです。力強くも丁寧で年季の入った手つき。中澤さんが積み重ねてきた“想い”が詰まっているようでした。


僕が訪れたその日もTIKU-は満席。観光客が通る表参道からは1本脇道にも関わらず、です。どうしてこの場所で成功することができたのでしょうか。

「CAMP不動産の『倉石さん』が空き家だったこの物件を紹介してくれたんですけど、一目見た瞬間に、自分がここでピザを作っているイメージがむくむく湧いちゃって。それからは誰に何を言われても“やる!”って決めました。お金もなかったですが、大工さんと一緒に工事もできる限り自分でやって。ピザに関しては、ちゃんとしたものを作れば、必ずお客さんには来てもらえると信じていましたから。今でもそうです。ちょっとでも手を抜いたりしたら分かっちゃいますからね。精進します」

『倉石さん』とはいかなる人物なのか。その前に、善光寺門前暮らしの先駆けの存在と言われる『増澤さん』に会いに行くことに。


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未知の細道 No.53

ライター 志賀章人(しがあきひと)

「え?」が「お!」になるのがコピーです。
コピーライターとして、核を書くことで、あなたの言葉にならない想いを言葉にします。
京都→香川→大阪→横浜で育ち、大学時代にバックパッカーとしてユーラシア大陸を横断。その後、「TRAVERINGプロジェクト」を立ち上げ、「手ぶらでインド」「スゴイ!が日常!小笠原」など旅を通して見つけたモノゴトを発信中。次なる旅は、夫婦で世界一周!シェアハウス暦8年の経験から、子育てをシェアする未来の暮らしも模索中。
伝えたいことを、伝えたいひとに、伝えられるようになる。そのために、仕事のコピーと、私事の旅を、今日も言葉にし続ける。
「新聞広告クリエーティブコンテスト」「宣伝会議賞」「販促会議賞」など受賞・ファイナリスト多数。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。