阿左美冷蔵では、季節の旬の素材を使ったシロップを複数用意している。それでも、圧倒的な一番人気は、「蔵元秘伝みつ」。数えきれないほど阿左美冷蔵のかき氷を食べてきた阿左美さんの息子も、「小さい頃から、一番おいしいのは秘伝みつ」と言っているそう。
これはもう、必食でしょう。一杯目に「蔵元秘伝みつ 極みスペシャル」(1600円)を頼んだ。あずき粒あん、抹茶あん、白あんがついている。あんは、お好みで秘伝みつと合わせて食べるそうだ。さらに、トッピングで白玉もつけた。
スプーンに載せたかき氷を、一口。その瞬間、瞳孔が開いたと思う。ふんわりまろやかな氷が舌に触れ、しっとりと溶ける。それは祭りで食べる、シャリシャリのかき氷とはまるで違う、新感覚だ。
その氷と一緒に、これまで経験したことのない甘みが口のなかで花火のように華やかに広がり、スッと消える。うま味すら感じるのに、口に残るしつこい感じが一切ない。滑らかで絹織物のような食感の天然氷と、濃密さと爽やかさを両立する秘伝みつの相性が抜群で、まるで仲良く手をつないでスキップしているよう。
実はこの食べ心地も、阿左美さんの演出だ。冷凍庫は、冷凍食品の基準を満たすために、だいたいマイナス20度から25度の設定なっている。そのため、氷は過冷却状態で硬くなる。そこにシロップをかけてもうまく染み込まず、流れてしまう。また、氷の食感も内部は過冷却でカサカサ、表面はすぐに溶けてベタっとした状態になるという。
「それを防ぐために、僕らがお店に来て朝一番にするのは氷を冷凍庫から出すこと。10時の営業開始に合わせて、6時頃には氷を出しておきます。溶ける寸前の状態になると氷は滑らかに削れるし、シロップをかけた時にもすぐ馴染むんです」
さらに、夏と冬では「氷のかき方(削り方)」も変えているという。気温が低い冬は、できる限り薄く削ってフワフワに。同じ状態で夏に出すとすぐに溶けてしまうので、あえて粗めに削って、硬めに仕上げる。すべては、「天然氷のおいしさ」を伝えるため。この心意気が味に表れているからこそ、20年以上にわたって支持されるのだろう。そして、阿左美冷蔵で最もかき氷がしっとりフワフワしている季節は冬! ということだ。
未知の細道の旅に出かけよう!
冬にしか出会えない、寒さを忘れるかき氷