未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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戦国時代から氷を作る阿左美冷蔵の心意気 冬にしか出会えない、寒さを忘れるかき氷

文= 川内イオ
写真= 川内イオ、ファム フォン タオ
未知の細道 No.278 |10 April 2025
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#2目からウロコの「冬にかき氷」

阿左美冷蔵で展示されている昭和の削氷機。

天然かき氷がブームと言われて久しいけれど、いつ頃からブームが始まったのか、ご存じだろうか? 生成AIの「チャットGPT」に尋ねてみたところ、「2000年代後半から2010年代初頭にかけて広がりを見せました」。ちなみに、僕がグーグルで検索をかけたら、2012年の時点で「加速するかき氷ブーム」という言葉が使われていた。

2025年の今、これはもう一過性の流行りじゃなくて、ひとつのスイーツのジャンルとして定着したと言ってもいい気がする。でも、僕は食べたことがなかった。子どもの頃から祭りに行けば必ず注文するぐらいかき氷が好きなのに、天然氷は未体験。

理由は、並びたくないから。天然氷のおいしいかき氷を出すお店は、いつも行列ができているという印象がある。検索をした際、ある記事には「最大6時間待ち」とあった。銀行のATMも、郵便局の窓口も、少しでも人が並んでいたら「また今度でいいや」と避ける僕には、夏の暑い日に、どれだけ待つかもわからない行列の最後尾につける根気がなかった。

こうして「ブーム」を横目で眺めてきた僕だが、ある日、調べ物をしていたら、たまたま【冬に食べる、長瀞「阿左美冷蔵」のかき氷が好きだ。春前に、花見登山とかき氷】(山と渓谷オンライン/2021年2月19日)という記事を目にした。

目からウロコがポロっと落ちた。冬にかき氷! 記事にいろいろと書かれているなかで、僕が惹きつけられたのは、夏には大行列ができる阿左美冷蔵も、冬なら並んだとして比較的短時間という言葉だった。

しかも! 天然氷の蔵元として創業1890年(明治23年)と紹介されていた阿左美冷蔵について調べると、かき氷専門店を始めたのは1992年とある。かき氷が注目を集める10年以上前のことで、「ブームの火付け役」と書いている記事もあった。なぜいち早く天然氷のかき氷に目を付けたのか、気になる。

行列嫌いの僕が天然氷のかき氷デビューするなら、冬に阿左美冷蔵を訪ねるしかない! 僕は3月某日、秩父に向かった。その日は、車のフロントガラスが白くかすむほどの雪が降っていて、図らずも「真冬のかき氷」にピッタリの天候となった。

取材日の朝、ホテルの窓から見た景色。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

冬にしか出会えない、寒さを忘れるかき氷

最寄りのICから【E17】関越自動車道「花園IC」を下車
1日目
ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン一つ星で、参拝客が年間100万を超える宝登山神社で参拝。秩父鉄道の長瀞駅から出ているロープウェイで、宝登山ハイキング。下山後、阿左美冷蔵でかき氷を食べて、疲れを癒す。
宝登山神社
宝登山ロープウェイ
阿左美冷蔵
2日目
和船で荒川を下る「川下り」を体験。3社が運航しており、こたつを備えた船もあり、寒い日でも安心。帰りに阿左美冷蔵に寄り、前日と違う味を楽しむ。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。