阿左美冷蔵は金崎本店と寶登山道店の2店舗あり、今回は西武秩父駅から車で30分ほど、国道140号線沿いにある本店に向かった。
取材開始は、開店時間と同じ10時。少し早く着いたので車のなかで待機していたら阿左美さんが車まで来てくれて、ご挨拶。「すごい雪なので、今日は臨時休業にしました」ということで、期せずして誰もいないお店のなかでゆっくりお話を聞くことができた。
まず、阿左美冷蔵の歴史について話を聞く。天然氷の蔵元としての創業は1890年(明治23年)ながら、実はもっとずっと前から秩父と縁が深かったという。戦国時代、関東を中心に秩父や隣接するエリアも治めていたのが、北条氏。秩父にほど近い鉢形城(埼玉県寄居町)の城主、北条氏邦のもとで仕えていたのが阿左美氏だ。
しかし、北条氏が豊臣秀吉に敗れ、鉢形城も陥落。その後、阿左美氏は農村に土着した武士である郷士として、地元に残った。今も秩父郡皆野町には江戸時代の居館跡「阿左美氏館」が遺されている。
「北条氏が破れた時に、本家の阿左美さんが一族のものに言ったらしいんですよね。『これからは、世のためになるようなことをして生きていかねばなりません』と。その当時、阿左美家が手掛けていた事業が氷屋、養蚕、脱穀したりするための水車の3つでした。それで氷屋を受け継いだうちのご先祖様には、農家や普通の家の人が休んでいる冬の間に精を出して氷を作り、ほかの人が百姓仕事で忙しくなる夏、みんなの役に立つことをしなさいと言ったと伝えられています」
なんと、阿左美家は戦国時代から秩父で氷を作っていたのだ。筋金入りの氷屋さん! ところで、「みんなの役に立つこと」ってなんだろう?
未知の細道の旅に出かけよう!
冬にしか出会えない、寒さを忘れるかき氷