未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて 世界中の“魔法”が集まる「えほん村」

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.277 |25 March 2025
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#11最後まで、生き様を見せる場所

「少し前までは『かっこいいうちに辞めよう』と思っていたんです。でも、最近テレビで『100歳越えのラーメン屋のおばあちゃん』や、『95歳で現役の弁当屋さん』が紹介されていたんですね。それを見て『生き様ってこういうことかな』と思うようになりました」

この40年を振り返ると、雅子さんは常にえほん村で自分をさらけ出してきた。出産ギリギリまで大きなお腹を抱えて通い、子どもたちに『お腹に耳を当ててごらん、赤ちゃんの音がするよ』と伝えて聴かせた。子どもたちと一緒に庭で妖精を探し、時には涙しながら絵本の読み聞かせをしたこともある。

「もう本当に、全部見せてきたから。ここまで来たら最後まで見せるのもありかなって。年齢を重ねていけばいつかは最後が来るんでしょうけど、その時までは続けていきたいなと思っています」

頷く太三郎さんの横で、雅子さんが少し思い直したように続けた。

「でもね、私はやっぱり単純に本が好きで、本がないと落ち着かないんです。だから本に囲まれていたいだけなのかもしれません。自分のわがままでもあるんですよ」

匍匐前進で祖父の書斎に向かう少女のような表情で、「誰もいない休館日にえほん村に来るだけで、嬉しくなるの」と雅子さんは笑う。

最後に、ふたりを惹きつけ続ける絵本の魅力を聞くと、雅子さんが「えー、もう好きすぎてわからない!」と声を上げた。

「絵本に限らず、本って読むだけで異次元に入り込めるんですよね。今、世の中の人は頭のなかでいろいろなことを考えているけれど、まずは本の世界に入ってみたらいいじゃない!と伝えたいくらい。だって絵本は本当に、人間が生み出せる魔法なんですから」

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて

最寄りのICから【E20】中央自動車道「小淵沢IC」を下車
えほん村は、2歳以上550円で閉館まで絵本を楽しむことができる。途中でランチやお茶をしに外へ出て戻ってくることも可能なので、近くのカフェや飲食店などでごはんを食べて、また絵本の世界に戻っていくのもいいだろう。えほん村では、日によって「絵本ライブ」と呼ばれる読み聞かせや、マリオネットショーなどのイベントも開催しているので、チェックしてから行ってみよう。
ehonmura 0才~100才の子どものこころへ

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。