「少し前までは『かっこいいうちに辞めよう』と思っていたんです。でも、最近テレビで『100歳越えのラーメン屋のおばあちゃん』や、『95歳で現役の弁当屋さん』が紹介されていたんですね。それを見て『生き様ってこういうことかな』と思うようになりました」
この40年を振り返ると、雅子さんは常にえほん村で自分をさらけ出してきた。出産ギリギリまで大きなお腹を抱えて通い、子どもたちに『お腹に耳を当ててごらん、赤ちゃんの音がするよ』と伝えて聴かせた。子どもたちと一緒に庭で妖精を探し、時には涙しながら絵本の読み聞かせをしたこともある。
「もう本当に、全部見せてきたから。ここまで来たら最後まで見せるのもありかなって。年齢を重ねていけばいつかは最後が来るんでしょうけど、その時までは続けていきたいなと思っています」
頷く太三郎さんの横で、雅子さんが少し思い直したように続けた。
「でもね、私はやっぱり単純に本が好きで、本がないと落ち着かないんです。だから本に囲まれていたいだけなのかもしれません。自分のわがままでもあるんですよ」
匍匐前進で祖父の書斎に向かう少女のような表情で、「誰もいない休館日にえほん村に来るだけで、嬉しくなるの」と雅子さんは笑う。
最後に、ふたりを惹きつけ続ける絵本の魅力を聞くと、雅子さんが「えー、もう好きすぎてわからない!」と声を上げた。
「絵本に限らず、本って読むだけで異次元に入り込めるんですよね。今、世の中の人は頭のなかでいろいろなことを考えているけれど、まずは本の世界に入ってみたらいいじゃない!と伝えたいくらい。だって絵本は本当に、人間が生み出せる魔法なんですから」
未知の細道の旅に出かけよう!
八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて
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