未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて 世界中の“魔法”が集まる「えほん村」

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.277 |25 March 2025
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#9アイディアに終わりがないから、死ぬまで作り続ける

  • 妖精や動物をモチーフにした椅子を始めとする家具は、太三郎さんの作品。
  • 「なにを言うとんねん」などと作品に話しかけながら制作していると太三郎さん。彼のなかで動物や妖精、魔女は生きている。

太三郎さんは主に木工作家、雅子さんは絵本作家として活動を続けながら、たくさんの人が訪れる場を営み続けて40年。ふたりにとってこの場所がどういう存在なのかを聞いてみると、先に太三郎さんが「僕と彼女とでは、少し考え方が違うかも」と口火を切った。

「僕はここに来る人をね、ビックリさせたいんですよ。『へえーこんなことができるんだ!』とか『おもしろい発想だな』とか。毎日のようにアイディアが湧いてくるから、作品もえほん村も常に変化していく。それが面白い」

えほん村の敷地には小さな小屋がいくつか点在しており、それらも太三郎さんの手作りだ。アイディアが浮かんだら建物を増やしたり、内装を変えたり、新たな家具を作ったり。日々アップデートされる世界観で再訪者を魅了する。そのアイディアはどこからやってくるんだろうか。

「やっぱり自然の造形から得られるものが大きいですね。例えば、森からやってくる妖精のために、ものづくりをしようと思ってみたりね。本当に見たこともあるんですよ。『これを子どもたちが見たらびっくりするだろうな』と考えながら作ったりもしています。だからアイディアが生まれる限り、終わりがないんです。きっと死ぬまで作り続けるのかなと思いますね」

御年80歳。ものづくりをしている間は年齢のことを忘れていると話す太三郎さんは、今でもずっと子どもの頃と同じ目線で世界を見ているのだろう。ただ、体力的な不安を考えると「そろそろ辞めようか」と考える日もあるという。

「そういう波は時々来るんだけど。えほん村に来てくれるみなさんと話をしていると、なんかね、『またがんばろう』っていう気持ちが湧いてくるんですよ」

太三郎さんが一から作ったという「えほん村シアター」。映画の上映やピアノで伴走しながらの手遊び歌イベントなどを開催する場所。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて

最寄りのICから【E20】中央自動車道「小淵沢IC」を下車
えほん村は、2歳以上550円で閉館まで絵本を楽しむことができる。途中でランチやお茶をしに外へ出て戻ってくることも可能なので、近くのカフェや飲食店などでごはんを食べて、また絵本の世界に戻っていくのもいいだろう。えほん村では、日によって「絵本ライブ」と呼ばれる読み聞かせや、マリオネットショーなどのイベントも開催しているので、チェックしてから行ってみよう。
ehonmura 0才~100才の子どものこころへ

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。