今度はえほん村の「館長」で、「マジョさん」の異名を持つ雅子さんのお話を聞いてみる。
「マジョさん」というのは、えほん村を訪れる子どもたちからいつの間にかついたニックネーム。雅子さんの作品『マジョマジョ』シリーズから来ているのかもしれないし、ご本人から溢れ出る“魔女っぽさ”からかもしれない。
幼少期のことを聞くと、「私は本当に、苦労がなにもないの」と話す。太三郎さんより7歳年下の雅子さんは、詩人の祖父のもとに文学者が集まる“文学者の家”で育った。とにかく本がたくさんある家で、文字が読めなくても本をめくって楽しんでいたという。
「『おじいちゃんの部屋には絶対に近づいてはいけません』と言われていたんだけど、そう言われるともっと近づきたくなるでしょう。おじいちゃんがトイレや散歩に出た隙に、匍匐前進で階段を登って忍び込んでいました。おじいちゃんの文机を覗き込むと、墨のいい匂いがして。あの匂いは今でもずっと好きですね」
本と同じくらい雅子さんを虜にしたのが、色彩だ。身体が弱く幼稚園に通えなかった雅子さんを、母は包装紙を敷き詰めた3畳ほどの部屋に12色のクレパスとともに放り込んだ。すると、一日中飽きることなく色を重ねていたそうだ。
また、祖母の知り合いの現代アート作家・白髪一雄さんのもとを訪れた時の衝撃が今でも忘れられない、と雅子さん。天井からロープを吊るし、足に絵の具をつけて紙の上をターザンのように走り回って絵を描いていたという。もちろん、雅子さんも一緒になって絵の具まみれになりながら紙の上を這いつくばった。
「絵の具の匂いとか、もう食べたいくらい好きだったんです。絵が好きというより、色を合わせて重ねてみることに夢中でしたね。なにもないところから、なにかを生み出せることに感動していたのかもしれない」
未知の細道の旅に出かけよう!
八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて
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