「彼女のプラチナブロンドがあまりにも綺麗なので、それをじいっと見ていたんです。そうしたら『あなたの作品を見せて』と言われたので、見せたら『下手だ』って言われたんですよ。『下手だけど、でもなにかがあるからうちで仕事しなさい』って」
そうして出版されたのが、「樹々の下のお家」を意味する『Das Haus under den bunten Baumen』という絵本で、後に日本語では『みのむしおばさん』と訳された。雅子さんが得意とする柔らかな色合いを詰め込んだ初著書だったが、評判は散々。チューリッヒからフライブルクの自宅に届いた新聞には「日本から来た小さな女の子が、なんだか串刺し団子のような木を描いている」と酷評された。残念な結果を、雅子さんは「それがねえ」とおかしそうに続ける。
「もうこれで仕事はなくなるだろうと覚悟していたら、最初に刷った1500部の売れ行きがよかったから2冊目も出せると連絡をもらったんです。その後、増刷してアフリカやヨーロッパのドイツ語圏にまで広まっていきました。人間の“怖いもの見たさ”なのかもしれませんね」
予想もしない形で注目を集め、「ボローニア展示会」でも脚光を浴びた雅子さん。『モモ』などで知られるドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデを始めとした有名作家たちと交流を深め、ドイツ在住の4年間の間に3冊の絵本を出版した。
一方の太三郎さんも、在独3年目にして自分の娘を題材にした『Tama und die Horzerne giraffe(タラと組木のキリン)』を出版。「ノルドズッド社」の社長、ブリギッテさんに徹底的に絵を叩き込まれたという念願の作品だ。そのまま2冊目の出版も決まるか……というタイミングで、日本で暮らす家族の事情で帰国を余儀なくされ、ふたりのドイツ生活は幕を閉じた。
未知の細道の旅に出かけよう!
八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて
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