「お前の絵は面白いな。ただ、日本じゃない」
時に合作で絵本を作りながら、それぞれの表現を磨いた太三郎さんと雅子さん。絵本作家の道を模索し出版社を巡るなかで、太三郎さんはある人からアドバイスをもらった。まだ絵本の市場が小さかった日本ではなく、絵本の歴史が長いヨーロッパでの活動を勧められたのだ。
「彼が言うには、ドイツに行ったほうが道が開けるんじゃないかと。もちろん不安だらけです。でも、好きな道を突き詰めたい一心で、デザインで稼いだお金を資金にしてドイツに行ったんですよ」
太三郎さんの不安を断ち切ったのが、自由人の雅子さん。マンションや車の買い手を見つけて、太三郎さんを引き留めるしがらみをなくしていった。振り返りながら「追い込み型だよねえ」と笑い合う。
1977年、ふたりはスイスとフランスの国境にほど近い、南ドイツのフライブルクという町に降り立った。大きな転機となったのは、一年に一度イタリアで開催される世界最大規模の児童書専門の国際見本市「ボローニア展示会」。絵本出版社「ノルドズッド社」の社長、ブリギッテ・シジャンスキーさんとの出会いだった。
スイスで生まれ育ったブリギッテさんは、中立国と言えども第二次世界大戦の大きな影響を受けながら大人になった人だ。「絵本をとおして子どもたちに平和を伝えたい」という彼女の夢を詰め込んだのが、出版社「ノルドズッド社」。想いに共感した憧れの出版社で出版に漕ぎ着けたのは、雅子さんだった。
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八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて
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