未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて 世界中の“魔法”が集まる「えほん村」

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.277 |25 March 2025
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#5絵本作家を目指して、ドイツへ

松村夫妻が手がけた絵本も、もちろんじっくりと読むことができる。

「お前の絵は面白いな。ただ、日本じゃない」

時に合作で絵本を作りながら、それぞれの表現を磨いた太三郎さんと雅子さん。絵本作家の道を模索し出版社を巡るなかで、太三郎さんはある人からアドバイスをもらった。まだ絵本の市場が小さかった日本ではなく、絵本の歴史が長いヨーロッパでの活動を勧められたのだ。

「彼が言うには、ドイツに行ったほうが道が開けるんじゃないかと。もちろん不安だらけです。でも、好きな道を突き詰めたい一心で、デザインで稼いだお金を資金にしてドイツに行ったんですよ」

太三郎さんの不安を断ち切ったのが、自由人の雅子さん。マンションや車の買い手を見つけて、太三郎さんを引き留めるしがらみをなくしていった。振り返りながら「追い込み型だよねえ」と笑い合う。

1977年、ふたりはスイスとフランスの国境にほど近い、南ドイツのフライブルクという町に降り立った。大きな転機となったのは、一年に一度イタリアで開催される世界最大規模の児童書専門の国際見本市「ボローニア展示会」。絵本出版社「ノルドズッド社」の社長、ブリギッテ・シジャンスキーさんとの出会いだった。

スイスで生まれ育ったブリギッテさんは、中立国と言えども第二次世界大戦の大きな影響を受けながら大人になった人だ。「絵本をとおして子どもたちに平和を伝えたい」という彼女の夢を詰め込んだのが、出版社「ノルドズッド社」。想いに共感した憧れの出版社で出版に漕ぎ着けたのは、雅子さんだった。

2階には、マリオネットショーや絵本ライブを行うステージがある。雅子さんはドイツにいた頃はマリオネットの劇団にいたこともあるという。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

八ヶ岳の「こどものこころ」を訪ねて

最寄りのICから【E20】中央自動車道「小淵沢IC」を下車
えほん村は、2歳以上550円で閉館まで絵本を楽しむことができる。途中でランチやお茶をしに外へ出て戻ってくることも可能なので、近くのカフェや飲食店などでごはんを食べて、また絵本の世界に戻っていくのもいいだろう。えほん村では、日によって「絵本ライブ」と呼ばれる読み聞かせや、マリオネットショーなどのイベントも開催しているので、チェックしてから行ってみよう。
ehonmura 0才~100才の子どものこころへ

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。