麻紙の生産と販売をおこなう「野州麻紙工房」を開き、創作活動を始めた大森さん。最初はハガキやレターセット、名刺などの身近な紙製品を制作していた。そこである人から「照明や壁紙もやってみたら?」と言われたことをきっかけに、勧められるままにそれらを作って展示会をおこなってみることに。
最初はあまり乗り気ではなかった展示会だが、制作と展示を進めるうちに楽しさや作り手としての思いが強くなっていった。月に一度という高頻度で展示会をおこなうようになった頃、あるお客さんから「なんか重いね」と言われたのだという。
「そう言われてみると、たしかに濃いなこれ……と思いました。麻を中心とした自然素材を使って、鹿沼の自然を届けるようなイメージが逆に荘厳になりすぎた、というか。これは一般家庭では使えないよね、という感じでした」
苦笑いする大森さんだったが、レストランやホテルでは映える作品も多く、栃木県内の「星野リゾート 界 川治」の最上階「野州麻の間」では、大森さんが麻の紙で手がけたランプやベッドサイドボードなどが部屋を飾っている。
たしかにホテルのような自由空間なら、麻の魅力をもっと見てもらえる。展示会での経験をきっかけに、大森さんは工房の横にカフェをオープンした。大森さんの作品を見たり購入したりすることができるギャラリー、私がさせてもらったような体験活動のほか、訪れた人が麻の空間でゆっくりと食事をできるスペースだ。現在、カフェの運営はイベント時のみだが、店内の展示や商品は見せてもらうことができる。