長野県小谷村
長野県小谷村は歴史的にも災害が多い村として知られている。それを逆手にとり、小谷村では10年前から、村を守る砂防ダムなどのインフラツアーを積極的に行ってきた。そんな小谷村で今年から全く新しいツアーがはじまるという。その名も「おたりの防雪施設めぐり」だ。土木の専門家やインフラマニアたちとともに、超マニアックなツアーに参加した。
最寄りのICから【E8】北陸自動車道「糸魚川IC」を下車
最寄りのICから【E8】北陸自動車道「糸魚川IC」を下車
トンネルとカーブだらけの雪深い谷間を、電車がゆっくりと進んでいく。
先人たちは、こんな山間部によくぞ電車を通すことができたものだな、と思いながら窓の外を眺めている。私たちは今、長野県小谷村に向かっているのだ。
「稗田山崩れ」という日本三大崩壊地のひとつがある小谷村は、崩落などの災害が多い土地として知られている。崩壊地とは山崩れや地滑りとも呼ばれ、山の斜面の地層や岩石が大雨や地震などによって崩落・崩壊した地形のことだ。さらに小谷村は特別豪雪地帯にも指定されていて、雪害、特に雪崩の被害も多い。
「小谷村でマニアックなツアーがあるから一緒に行ってみない?」と誘ってくれたのは、土木とインフラ観光の専門家で、私にダムツーリズムの面白さを教えてくれた三橋さゆりさんだ。昨年まで国土交通省に勤務していた三橋さんは、日本のダム観光ブームを作った立役者の一人で、インフラマニア、特にダムマニアたちにはよく知られている有名人でもある。
三橋さんによると、山間部にある小谷村では災害の多さを逆手に取った、砂防ダムや崩壊地をめぐるインフラ観光が10年ほど前からあって、マニアを中心に好評を博しているのだが、今年からさらに全く新しいインフラツアー、「防雪施設めぐり」が始まるのだという。おそらくこれは日本でも初めてのツアーだろう。しかもインフラマニアが多くくるらしい。その記念すべき最初の回に一緒に行ってみないか、というお誘いに、私は一も二もなく「行きます!」と返事したのであった。
私たちは新潟県にあるJR糸魚川駅から乗車し、長野県小谷村にあるJR中土駅へと向かっていた。先頭車両に立って車窓を眺めながら、三橋さんがGPSを片手にJR大糸線周辺のインフラや災害の歴史を詳しく教えてくれた。
車窓から山の斜面に土砂の混じった灰色の雪の塊のようなものが目に入った。土砂崩れにも見えるけど、あれはいったい何だろうか? と思いながら、電車は夕暮れの小谷村へと進んでいった。