翌日。早く起きて、三橋さんと宿泊地の近くを散策した。豪雪地帯対策特別措置法に指定された豪雪地帯の中でも、さらに「特別豪雪地帯」に選ばれている小谷村だが、地元の人曰く、今年は非常に雪が少ないらしい。しかしそれでも、通常の生活では見ないような量の雪が、目の前の川に積もっていた。
8時半に、ツアーの集合場所である小谷村役場に着いた。参加者は20名ほどだろうか、さまざまな年代の人たちが集まっている。早速ツアーの主催者である小谷村観光連盟のスタッフから、40ページほどの厚いファイルを渡された。なんと今日のツアーのガイドブックだった。
めくってみると今日のルートや地図だけでなく、今日見学する13の施設の地区名、管轄、竣工年度、規模、そして詳しい特徴、写真、さらには設計図などとても細かく載っている。そのうえ、小谷村の災害の歴史や、雪崩のメカニズムの解説までも。記載内容の細かさもさることながら、これは参加者にも相応の知識や興味がないと読めないだろう……。これを手にした私以外の参加者は既にテンションが上がったようで、熱心にファイルを読み始めていた。
さて、最初の見学が始まった。ガイドは長野県砂防ボランティア協会の和澤伊久夫さん。今日最初の見学施設は、なんとこの小谷村役場に近接されている「雨中(うちゅう)バイパススノーシェルター」だ。
スノーシェルターとは、道路や路線を覆い、吹雪から交通を守るものだ。小谷村の中心部である雨中地区の二つのトンネルを繋いでいるこのシェルターは、もし事故があったら直接役場に避難できるなど、珍しい設計になっているという。和澤さんのていねいな解説は、初心者の私にもとてもわかりやすい。それもそのはず、和澤さんは長野県砂防課のOBで、つまり土木のプロなのだ。
役場をあとにし、次の目的地に向かってバスに乗って移動する。