さて予定の防雪インフラ施設をすべてめぐり、小谷村役場に戻ってきた。8時半に集合し、3時半に終了するまでたっぷり半日、なんと13施設。ただただ雪の中を、防雪インフラ施設だけを巡るツアーだったのだが、非常に見ごたえのある1日だった。和澤さんと伊藤さんは、このツアーで見た地形や積雪状況から得られる情報は多く、たとえ豪雪地帯に住んでいなくとも、普段の防災や減災に生かしてほしいという。
こうして初めての防雪巡りツアーは幕を閉じた。まわりを見渡すとだれもが満足そうな表情を浮かべている。聞けばツアーに参加している人たちの大半は、すでに何度もこの小谷村のインフラツアーに参加しているという。マニアが何度も訪れたくなるこの面白さは「小谷村が10年かけて砂防ダムなどの災害防止のためのインフラツアーをやってきた蓄積なんでしょうね」と三橋さんは言った。
さて新幹線に乗るために、私たちはまた大糸線に乗ることにした。再び大糸線に揺られながら、ふいに前日、車窓から見えた灰色の雪の塊のことを思い出した。ああ、あれは雪崩の跡、デブリだったんだなぁ……と、ようやく気がついた。
前日のうちから私は、すでに雪崩を見ていたのだ。 今日もバスの車窓から何度も山のなかに雪崩の跡があるのを、肉眼で確認することができた。まさに雪崩が生活圏内にある村なのだ。そしてこの村には人々が過酷な環境でも生きるためのインフラと技術が、さまざまに息づいている。それを堪能した1日だった。