続いて向かったのは梨平集落。集落の入り口からは白馬連峰が遠くに見えた。小谷村観光連盟の職員でツアーの企画・実施を担当する伊藤嘉一さんがいわゆる「白馬三山」(白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳)を教えてくれて、皆しばし立ち止まって、輝く山々を見つめた。
梨平集落のはずれから、雪深い坂道を上方に向かって登ること数分。山の中に不意に巨大な構造物が現れた。これが「梨平 雪崩減勢工(なだれげんせいこう)」だ。直径50センチほどの鋼管が格子型に組まれた構造物の高さは10メートルはあろうか。
雪崩は水流と違って速度が遅くなると急速に硬化する性質がある。なので雪崩は完全にせき止める必要性はなく、このように格子状になっているのだという。小谷村の山間部の集落では雪崩の被害は歴史的に深刻であり、近代的な防雪施設ができる以前は人々に大きな被害をもたらしてきた。しかしこの雪崩減勢工のおかげで、梨平集落の30戸の安全が保たれているという。