またバスに乗り、中谷・白岩地区へ移動する。このツアーは、次から次へと防雪施設だけを巡っていく。防雪施設と言っても、強固な構造物から軽量な構造物まで、さまざまな種類があることが、ここまででだいぶわかってきた。
中谷地区で見た「吊柵(つりさく)」は、重厚な構造物に比べたら施工が容易な構造物であることは、素人の私でも見てとれた。落雪を防ぐ役割のこの吊柵は、急勾配な斜面や不安定な地質の場所にも設置できるという。その場所に適した防雪施設があるというわけだ。
今度は同じ中谷地区で、巨大な雪崩が毎年のように発生するという「大なで沢」へと向かった。小谷村でも有数の豪雪地へ向かう県道に配置された「大なで沢 スノーシェッド」は箱型の構造であり、この上にデブリが堆積されても、その荷重に耐えられるよう強固な作りになっている。このシェッドができたことで、厳冬期でも車が安全に通行できるようになった、と和澤さん。
さらに雪道を登ったこの上方には、「大なで沢 雪崩誘導防護堤」がある。スノーシェッドができたことで交通障害はなくなったが、さらに確実にスノーシェッドの上に雪崩を誘導するためにできたのが、この誘導堤なのだ。
そして今日の最終目的地、同じ中谷地区の「中谷桐の木沢 雪崩防護フェンス」にたどり着いた。山間の村は、日が陰るのが早い。もうそろそろ夕刻へと近づいていた。
去年できたばかりの最新の設備である、この巨大な雪崩防護フェンスは高さ5. 5メートル、長さ35メートルにも及ぶ。発生した雪崩が道路に到達するのを防ぐのが役割で、雪崩の発生源となる山の上部山腹にも雪崩防止柵がたくさん配置されている。これらを合わせて複合的に雪崩を防ぐ仕組みになっている。