「気仙沼でここにしかないものっていうのが、作りたかった」
そう言って岡本さんが教えてくれたのは、水族館で使用している氷の作り方。全部で3、4ヶ月かかったという氷作りは、普段の水揚げに使われる氷とは全く違うものだ。
「ポンプで水をかき回しながら、4日くらいかけてゆっくり凍らせていくんです。そうすると透明度の高い氷になる。外側から凍っていくので、タイミングを見計らって先に凍らせておいた魚を手で置いていった。どうやったら泳いでいるように見えるか、隣に置く氷とのバランスはどうか。そんなことを考えながら一つずつ丁寧に」
泳いでいるうちに凍ってしまったんじゃないかと思った氷の水族館の魚たちは、岡本さんの手によってその動きを作り出されていたのだった。完成したと思えば割れてしまったこともあったという。気が遠くなるような作業。
「今、展示している魚は、気仙沼で水揚げされるもののほんの一部。もっといろんな魚があるのを見てほしいから、来年の冬には展示内容を入れ替える予定です」
つまり夏頃から、岡本さんの氷作りは始まる。どうしてそこまで、氷の水族館づくりに力を入れられるのか。
「震災後、観光客も若者も減っています。だから水族館もそうですけど、いろんな新しいことをやっていかなきゃいけないと思って。私は氷屋だから、氷を通して地元の発展に貢献できればいいなと思ってやっています」
そのあと岡本さんは笑って、付け加えた。
「でも実際、お客さんに楽しんでもらえるものを考えているときが、すごく楽しいからっていうのもあります」
ウィルソン麻菜