「終点ですよ」と声をかけられたのは、気仙沼ではなく石巻だった。土地勘のない私は、石巻から気仙沼まで、電車で行けばいいだろうと踏んでいたのである。早速、乗換案内を調べると1度乗り換えればいいらしい。少し時間はかかるが、JR気仙沼線で本でも読みながら移動しよう。
電車で石巻から前谷地まで移動し、気仙沼線への乗り換えホームを探すがなかなか見当たらない。ローカル線というのは、外から来た人間にはわかりづらいものだ。こういうときは、人に聞くに限る。
「すみません、JR気仙沼線に乗りたいんですけど」
眼鏡の優しそうな駅員さんに聞くと、乗り場を指差して教えてくれた。しかしホームではない。普通のバス停である。
「すみません、気仙沼線ってJRですよね」
再度駅員さんに確認するも、あれが気仙沼線ですよと教えてくれる。でもバスじゃないか……。混乱したままバス停に近づくと、たしかに「気仙沼行き」と書かれたバスがやってきた。気仙沼に着けるなら、これでもいいか。
調べてみると、気仙沼線は東日本大震災によって廃止され、このBRTと呼ばれるこのバスが走ることになったのだという。確かに窓から外を眺めていると、もともと線路だったような場所に沿って走っていたり、震災前は駅だったところにバス停があったりする。
そうか、ここにはもともと街があって、線路があった。今あるのは、何もない広い土地と、真新しい建物ばかりだ。これから私が向かう気仙沼は、津波の被害が大きかった街。そのことをバスに揺られながら、改めて考えていた。車酔いが激しく、本は読めなかった。
およそ2時間後、やっと気仙沼に到着。バスを降りると、その風の強さに驚く。これが港町の風。びゅうびゅうと吹かれながら、早速、海鮮を食べに……ではなく氷の水族館へ向かった。
ウィルソン麻菜