お話を伺ったのは株式会社岡本製氷冷凍工場の岡本貴之さん。創業者のお祖父様、お父様に引き続き3代目として氷屋さんを担う人だ。港町には欠かせないという氷屋さんの仕事について教えてもらった。
「港町では氷屋は当たり前というか、いないと魚を水揚げしても出荷できないから」
かき氷屋さんのイメージしか湧かなかった氷屋さんだが、実は私たちの生活にも大きく関わっている。毎日水揚げされる魚の鮮度を逃がさないまま、冷やしておいてくれる大切な氷。これが岡本さんたちが主につくってきた氷だ。
ただ岡本製氷冷凍工場はそういった業務用の氷の他に、氷を使ったイベントを行ったり、花やお酒を凍らせて贈る「氷の贈り物」というものもやっている。「こんなにいろいろやっている氷屋はいない」と本人が言うくらい幅広い。
それにしても、なぜ氷の水族館が始まったのか。持っていた疑問を投げかけてみる。
「今ある氷の水族館の前に、2002年に実は一度オープンしてるんです。北海道の雪まつりで魚を凍らせて展示してあるのを見た町内会の人が、うちの父に『できないか?』って持ちかけたのが最初です」
その声をもとに、気仙沼のお祭りで展示した氷の水族館は大盛況。気仙沼で水揚げされた魚が見られる珍しい水族館として、海の市での常設が決まった。1年で9万人が来場したという。それから9年のあいだ、気仙沼の新しい商業施設として、観光客を氷でもてなしていた。
そして、あの東日本大震災が起きた。
ウィルソン麻菜