未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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港町の氷屋さんが復活させた極寒世界

マイナス20℃!氷の水族館

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.103 |10 December 2017
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#4氷屋さんに会いに行く

「氷屋についてもっと知ってもらいたい」という岡本製氷冷凍工場の岡本さん

 お話を伺ったのは株式会社岡本製氷冷凍工場の岡本貴之さん。創業者のお祖父様、お父様に引き続き3代目として氷屋さんを担う人だ。港町には欠かせないという氷屋さんの仕事について教えてもらった。

「港町では氷屋は当たり前というか、いないと魚を水揚げしても出荷できないから」

 かき氷屋さんのイメージしか湧かなかった氷屋さんだが、実は私たちの生活にも大きく関わっている。毎日水揚げされる魚の鮮度を逃がさないまま、冷やしておいてくれる大切な氷。これが岡本さんたちが主につくってきた氷だ。

48時間かけて作られるという氷の透明度には驚く

 ただ岡本製氷冷凍工場はそういった業務用の氷の他に、氷を使ったイベントを行ったり、花やお酒を凍らせて贈る「氷の贈り物」というものもやっている。「こんなにいろいろやっている氷屋はいない」と本人が言うくらい幅広い。

 それにしても、なぜ氷の水族館が始まったのか。持っていた疑問を投げかけてみる。

「今ある氷の水族館の前に、2002年に実は一度オープンしてるんです。北海道の雪まつりで魚を凍らせて展示してあるのを見た町内会の人が、うちの父に『できないか?』って持ちかけたのが最初です」

 その声をもとに、気仙沼のお祭りで展示した氷の水族館は大盛況。気仙沼で水揚げされた魚が見られる珍しい水族館として、海の市での常設が決まった。1年で9万人が来場したという。それから9年のあいだ、気仙沼の新しい商業施設として、観光客を氷でもてなしていた。

 そして、あの東日本大震災が起きた。

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未知の細道 No.103

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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