未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
84

人生には、
人生に必要のないものが、
必要だ。

煙とシーシャを囲んで話をしよう。

文= 志賀章人
写真= 志賀章人
未知の細道 No.84 |10 February 2017
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#8煙もたけなわ

シーシャを吸いながら、おでんが食べられる居酒屋がある。

そう聞いて、ぼくは喜んで亮さんについていった。というのも、ぼくは前回、久しぶりとなる水タバコを4時間近く吸い続けた直後、早稲田通りにあるシンチャオという店で「バインミー」を食べた。

バインミーとはフランスパンにハムと野菜を挟んだベトナム流のホットドックだが、ベトナム人の店主がつくるバインミーがまた激ウマなのだ。しかし、しかしである。水タバコを吸い続けたあとでは、ふだん使わない顎まわりの筋肉を使っていたらしく、激しい筋肉疲労でフランスパンが噛めなくなっていたのだ。

おでんは、なんといってもやわらかい。シーシャとおでん。それはおそらく世界初にして最も相性のいい組み合わせなのではないか! いささか興奮気味に話してみると。

「どうですかね、水タバコを吸う人の肺活量は常人の2倍になるとか、高山病になりにくい体になるとかは言われてますけど……」

いささか亮さんを困らせてしまった。

シーシャが持ちこめるおでん屋とは「東京Jimbei」。

ばんびえんの近くにある店だが、マスターの崇さんは「うちは喫煙OKだし、水タバコを持ちこんではいけない理由がなかった」と笑う。だいこん、はんぺん、おつまみカレー。どれもやわらかいだけでなく美味しい。それもみずみずしいため、図らずしも水タバコにあうのである。

そして、店内にはばんびえんの常連さんの姿も。しかも、雑誌non-noに出てきそうな若くてキレイな女性である。話を聞いていると、どうやら別の水タバコ屋で店長を務めているらしい。

そこに、「どうも!」と言ってあらわれたのは、ぼくが出会った3人のお客さんのうちの1人。まさかさっそく再会してしまうとは。

「ばんびえんで吸って、亮さんの家に泊まって吸って、朝別れて、そのあとまたばんびえんで吸ってたこともありましたね」

2年半ほど通っているうちに、亮さんとはプライベートでも遊ぶようになったそう。おでん屋の崇さんも会話に加わる。

「うちも1日に何回も来てくれるお客さんがいるなぁ」

亮さんも言う。

「きょうだっけ、きのうだっけ、ってパニックになりますよね。きょう11時に来てくれたお客さんがいたんですけど、きのうは10時半、おとといも10時半に来てくれて。あれ? って」

たしかに近所にあったら通ってしまう。それに、たった2回の来店でこんな再会があるとは。どこの水タバコ屋さんでもきっとそう。こうしてゆるくつながり、その輪が広がっていくのだ。

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未知の細道 No.84

ライター 志賀章人(しがあきひと)

「え?」が「お!」になるのがコピーです。
コピーライターとして、核を書くことで、あなたの言葉にならない想いを言葉にします。
京都→香川→大阪→横浜で育ち、大学時代にバックパッカーとしてユーラシア大陸を横断。その後、「TRAVERINGプロジェクト」を立ち上げ、「手ぶらでインド」「スゴイ!が日常!小笠原」など旅を通して見つけたモノゴトを発信中。次なる旅は、夫婦で世界一周!シェアハウス暦8年の経験から、子育てをシェアする未来の暮らしも模索中。
伝えたいことを、伝えたいひとに、伝えられるようになる。そのために、仕事のコピーと、私事の旅を、今日も言葉にし続ける。
「新聞広告クリエーティブコンテスト」「宣伝会議賞」「販促会議賞」など受賞・ファイナリスト多数。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。