未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
84

人生には、
人生に必要のないものが、
必要だ。

煙とシーシャを囲んで話をしよう。

文= 志賀章人
写真= 志賀章人
未知の細道 No.84 |10 February 2017
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#7煙長戦に突入します

後日、ぼくは亮さんの事務所を訪れた。中東のクラシックな水タバコとは対照的な、新型の水タバコを知るためだ。

たとえば、ぶくぶくぶく……と音が鳴るのは、そのガラス瓶の中に水がはいっているからだが、水のかわりに、ジュースやワインをいれることもある。今回は特別にカルピスをいれてもらった。

タバコ葉はカルピスの味を邪魔しない甘めのミント。しかも、ホースはアイスホース。中に保冷剤がはいっていて煙を冷やすことができるのだ。

吸ってみると、ミントの清涼感が引き立つようでもあり、カルピスの甘さがひんやりと香って気持ちいい。たとえるならば、アイスクリームを食べたあとの余韻のような口あたり。吸い心地が驚くほど軽いのだ。

このカラードロータスと呼ばれる器具もおもしろい。

このカラードロータスと呼ばれる器具もおもしろい。アルミホイルでふたをするかわりにこれを使うことで、炭の大きさや置き場所に左右されなくなる。つまり、誰でも安定してちょうどいい煙が出せるようになったのだ。

「世界中で水タバコ屋が増えているのは、ロータスがあってこそだと思うんですよね。この器具が生まれたのは、2010年前後だったと思うのですが、熱の対流を研究している専門家といっしょに開発されたと聞いています」

ただの鉄板ではないのである。吸ったときにどういう熱の対流が起きて、どうしたら少量の炭で熱をキープして、いい煙が出せるのか。まさに水タバコのために生まれた器具なのだ。

そして、やはり気になるのはフレーバー。たとえば、このピーナッツバター。

「これ、珍しいんですけど、本物のピーナッツバターオイルを入れてるんです。これは衝撃でしたね。ついに本物を使いはじめたな、と思って。これまでは駄菓子のように香料を使って擬似的に味をつくっていたはずなんです。それに、このパイナップルなんかは本物の果肉を使ってるんですよ」

においを嗅いでみると、本物の果実ならではのみずみずしい香りがする。これをタバコ葉と同じように詰めて燃やすのだ。亮さんが味見したところによると、これまでのパイナップル味よりパイナップルの味がでるという。

フレーバーといえば、ぼくにはひとつ聞いてみたいことがあった。

水タバコには驚くほどたくさんのフレーバーがあるが、それは既製品ばかりではない。それぞれの専門店がミックスによって新しい味を発明していることもある。それは、どうやっているのだろう。

「プライベートでカフェに行ったとき、気になるドリンクを頼んでみることがあります。たとえば、バナナラテ。まずにおいを嗅ぎます。これは水タバコでいえば、あの会社のバナナだなとわかる。じゃあ、ラテをどうやって再現するか。コーヒーとバニラでいけると思って飲んでみたら、シナモンが効いていることに気づく。これなら『シナモンチャイ』でいける。ただ、シナモンチャイとバナナを混ぜるだけだと『シナモンチャイバナナ』でしかない。バナナラテにするためには、バニラをつなぎとして混ぜたらバナナラテとして出せるな、と考えました」

あとは、事務所で実験を重ねてお店で出せるレベルに仕上げていく。なるほど、こうして現代の水タバコは進化しているのである。

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未知の細道 No.84

ライター 志賀章人(しがあきひと)

「え?」が「お!」になるのがコピーです。
コピーライターとして、核を書くことで、あなたの言葉にならない想いを言葉にします。
京都→香川→大阪→横浜で育ち、大学時代にバックパッカーとしてユーラシア大陸を横断。その後、「TRAVERINGプロジェクト」を立ち上げ、「手ぶらでインド」「スゴイ!が日常!小笠原」など旅を通して見つけたモノゴトを発信中。次なる旅は、夫婦で世界一周!シェアハウス暦8年の経験から、子育てをシェアする未来の暮らしも模索中。
伝えたいことを、伝えたいひとに、伝えられるようになる。そのために、仕事のコピーと、私事の旅を、今日も言葉にし続ける。
「新聞広告クリエーティブコンテスト」「宣伝会議賞」「販促会議賞」など受賞・ファイナリスト多数。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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