こうして水タバコを吸いながらお話を聞かせてもらっていると、会話の間(ま)がゆっくりになっていいですね。相手がなにか言っても、
ぶくぶくぶく……
――それ、いいねぇ。なんて、一呼吸おいてから話す感じがたまりません。
2、3人で話をしにくるお客さんは多いですね。水タバコは1本で1時間半ぐらい持つので、飲み代より安くて濃厚に話せるし、少人数での話しあいに向いてるんですよ。
ぶくぶくぶく……
それにしても中東よりアメリカのほうが進化しているというのは意外ですね。
中東では昔ながらのダブルアップルやレモンミントをずーっと吸ってるんですよね。でも、水タバコが世界的ブームになってからは、アメリカがティラミスやブラウニーといった新しい味や、新しい器具を開発していったんです。
ぶくぶくぶく……
日本ではどうなのでしょう。伝わってきたのは最近なんですか?
12年ぐらい前に水タバコ専門店が下北沢にできたのが最初です。それまでも中東料理屋さんとかであったんですが、専門店は別物と言える水タバコになっているんです。
ぶくぶくぶく……
どういったところに差が出てくるんですか?
フレーバーや器具の違いはもちろんですが、それ以前に、専門店は炭を変えるのがていねいで、お客さんにあわせてじっくり煙をつくるんです。料理屋だと料理の合間に炭を置かざるを得ないので、そんなに面倒を見てられないんですよ。たとえば、いま、煙が少なくなってきてるじゃないですか。これは炭が小さくなって火が弱まってきてるんですね。ここに炭を足してあげると、火力が強くなる。ちょっとやってみますね。
ぶくぶくぶく……
煙が増えたのわかりますか? これでまた吸えるようになるんです。専門店はこまめに炭をチェックして、いい煙がでてるかを常に見ています。
ぶくぶくぶく……
たしかに、炭を変えると味も煙もよみがえりますね。それにしても、日本の専門店はどうして隠れ家のような場所にあるのでしょう。
アメリカなんかは店が大きいですよね。そういうシーシャラウンジと違って、日本は「シーシャカフェ」なんです。東京から水タバコ屋がはじまったわけですが、土地も資本もないので雑居ビルを安く借りるしかない。でも、日本には水タバコが吸える店が少ないので、お客さんが検索して探して来てくれる。だから看板がなくても成り立っちゃうんです。
ぶくぶくぶく……
「ばんびえん」って、ラオスの村の名前にありますよね?
はい、ボクも旅をしたことがあるんですが、バンビエンは「会話が人生最高の暇つぶし」みたいな場所なんですよ。あまりにやることがないので、基本的に「どっか行く?」って声をかけると、みんな「YES!」って言う。東京にはそういう場所が少ないなぁと思っていて。
ぶくぶくぶく……
ぼくは、シェアハウスに住んできたので、リビングに行けば誰かに会える。約束をしなくても誰かと出かけられるというのが日常でしたが、東京ではめずらしい環境ですよね。
ボクもゲストハウスが好きだったんです。暇人どうしが集まって出会いが生まれたり、いろんな世界を教えてもらったり、それがいちばんの楽しみで。ばんびえんには、ボードゲームやマンガ、そんな「人生に必要のないゆるいもの」がたくさんあるんですが、水タバコをきっかけに繋がってもらえたらうれしいですね。
ぶくぶくぶく……
水タバコがあると対話が生まれますもんね。
同じような思いのある人が出会って話しているうちに、人生がちょっとでも楽しくなればいいなぁって思いますね。ボクが水タバコに出会って、お店をやっているのもそういった出会いからですが、実はうちの従業員もみんなうちの常連さんだった人なんですよ。
ぶくぶくぶく……
むしろ、人生に必要なもの、なんじゃないですか(笑)?
ボクにとって水タバコはもう必要なものです(笑)。
ライター 志賀章人(しがあきひと)