千葉県南房総
南房総に、馬8頭、そして犬や猫までが一緒に暮らす美しい牧場がある。馬と一緒に生きていきたいと願った女性が、何年もかけてひとりで森を切り開いて作ったものだ。一体どうして、どうやって彼女はここに牧場を開いたのか? そのリアル開拓史と逞しい女性の素顔とは。
最寄りのICから館山自動車道「鋸南富山IC」を下車
最寄りのICから館山自動車道「鋸南富山IC」を下車
その“開拓者”は短い髪に、涼しげな目をしていた。ほうきで床を掃いているだけでも様になり、思わずカメラを向けた。
「わたし、レレレのおじさんです。空いている時間は全部掃除です。掃除が嫌いだったらこの仕事はやれないです」
そう微笑むと、またザッザッと軽やかにほうきを動かす。自分の体を動かして働く人はやっぱり美しい。
壁にはたくさんの乗馬道具がぶら下がり、柵の向こう側には数頭の馬が佇んでいた。パッと見ただけでも、実にいろいろな馬がいる。白と栗毛の美しい馬もいれば、黒くてずんぐりした子馬も。名前も、ダイフク、メリー、モミジ、パンダなどなど。
「みんな雑種です。誕生日もわからないし、“どこの馬の骨とも分からない”」
そんな八頭が、この南房総の馬森(まもり)牧場で暮らしている。さらには元気いっぱいのボーダーコリーや数匹の猫たちまで。動物の群れのリーダーは、菅野奈保美さん。
森を抱え込んだような広い敷地内では、乗馬をしたり、ホースセラピーが受けられる。経験者ならば、森の中や竹やぶコースなど、馬場の外でも馬に乗ることできるらしい。宿泊施設やバーケベキュー設備もあるこの場所を、彼女はほぼ一人で運営している。
というわけなので、彼女は世間的には「牧場オーナー」になるわけだが、私からみたら、フロンティアの開拓者である。ここは少し前まで広大な荒れ地だったのだが、そこを何年もかけて開拓したのがこの人なのだ。都会育ちの私は、たくましい人に対して無条件に近い憧れがある。それが女性ならば、なおさらだ。その開拓者に会ってみたい、そして、ついでに馬という生き物に乗ってみたいという好奇心で、ここに来たわけだった。
柵の向こうの馬たちは、私たちが近づくとのっそりと顔を出した。見つめてくる瞳の黒さは、吸い込まれそうなほどだ。
「こんにちは」と挨拶し、そっと頬に触れてみた。タフタフとしていて柔らかい。その横では、私と一緒に来た一歳の娘が、まるで臆することなく、「タッチ! タッチ!」と言いながら、馬の頭を遠慮なくはたいていた。彼女が大型動物に触れたのは、これが初めてだ。
未知の細道の旅に出かけよう!
南房総(二日間)
予算の目安 1.5万円~
※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。
川内 有緒