そろそろみんなでお昼をたべましょう! とモハンマド先生が言った。
え! 私も一緒に食べていいのですか? と尋ねると、なんでそんな当たり前の事を聞く? といいたげな表情で、先生が「もちろん!」と笑って答えてくれた。
金曜日のお祈りの後は、だいたいこうしてみんなでお昼を食べるのだという。今日のお昼はマトンカレーと豆のカレー、そして山のように積まれたナンだ。豆のカレーは持ち寄り、マトンカレーとナンは近所のハラールレストランで買ってきたものだ。
おいしそうな、かつ大量のお昼ご飯をみて、思わず私は「あの……お代は?」と聞いてしまった。すると先生はにっこりして「それは気にしないで! その代わり、お祈りしてくださいね」と言う。お言葉に甘え、神への感謝の意味になる「ヴィスミル・ラ・イル・ラ・マ・ミルラ・ヒーム」という言葉を教えてもらい、唱えてから食べ始めた。それはとてもおいしいカレーだった。
イスラムでは、お客や旅人を丁重にもてなすこと、そしてみんなで一緒にご飯を食べる事が、とても大切なこととされる。
客人にはたくさんのご馳走をふるまい、そしてその場にいる者が、一つの皿の料理を分け合って食べるのだ。そういえば、マレーシアのマヘディたちも、いつもそうだったなあ、と私は思い出した。いつも必ずおごってくれるか、みんなで食べるご飯に招待してくれたっけ。
マトンカレーは辛くて、そして羊肉本来の味がしっかりと残る、日本ではなかなか味わえない本格的なおいしさだ。豆のカレーは優しい味で、いかにも家庭料理といった感じ。
みんなは上手にナンでカレーをつまんで食べている。私がうまくできないでいると、モハンマド先生はスプーンをもってきてくれた。
「一つのお皿をみんなで分け合って食べるのが、私たちの大切な習慣だよ」と向かいの席のラシードさんが教えてくれた。「日本の女の子にびっくりされたこともあるけどね!」といってラシードさんは笑った。
それにしても、みんなとても日本語が上手だ。それもそのはず、ここにいる人たちは在住20年、などというのはザラだ。在住歴が一番長いラシードさんは、なんともう35年にもなるという。また伊勢崎モスクに集まるムスリムたちは、日本人の奥さんをもらっている人もたくさんいるそうだ。ラシードさんの隣のタリークさんや、そして実は先生も然り。
みなさんにとって、ここはどんな場所ですか? と聞くと、真っ先に「一番大切な場所!」という、アブドルさん。隣のマリクさんも頷いた。
だからこのモスクもムスリムみんなの寄付金によって土地を買い、建設した。寄付はこの周辺だけではなく全国のムスリムから集まる。
そういえば私の住んでいる水戸でもつい最近、きれいな緑色のモスクが建ちましたよ、とみんなに報告すると、みんなは「それは見に行きたいねえ!」と喜んでいた。
松本美枝子