未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
ver276

八ヶ岳の森で生まれる「作りたい」衝動 “革靴が好きすぎる男”が世界一になるまで

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.ver276 |10 March 2025
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#3美術、ガジェット、そして建築へ

都内の進学校に進んだ菱沼さんは、吹奏楽や英語劇の裏方を経て、高校では美術部に所属。ものづくり欲そのままに絵を描き続けていたのだろうと思ったら、「年間2枚くらいしか描いていなくて」と笑った。

絵を描く代わりに、青春時代を捧げたのはガジェットいじり。ちょうどiPhoneが出始めて世間を騒がせていた時代で、菱沼さんはiPod touchのデータに触ってスクリーンの見え方や動作をカスタマイズすることに夢中になった。学校帰りに池袋に寄っては電気屋巡りをして新しいガジェットを購入したり、ネットで仕様変更の技を調べたりして過ごしたという。

「高校進学の時に理系を選んでいたこともあって、当時はITや電気関係の仕事も少し考えていたような気がします。あとは美大もいいなと思っていて。勉強よりも絵を描きたいなという気持ちがありましたね」

ところが、菱沼さんが選んだのは建築学だった。

「学校の先生に『美大からの就職は難しいかもしれないよ』と言われたんです。それでほかの学科も見に行ったら、建築学科の展示物がかっこよくて。デザインの要素もありながら実用的といわれるプロダクトデザイン関係や建築関係の大学を受験することにしました」

建築デザインを学ぶために進学した菱沼さんだが、授業を受けるなかで梁や柱などの配置を設計する構造建築の分野に興味が沸いたという。

「建築には“美術的な部分”と“実用的な部分”があるんですけど、僕には美術的な部分の評価軸が曖昧に思えたんですよね。工学的な要素の強い構造建築では、物理的に『建つか・建たないか』といったエビデンスに基づいた判断ができるのがいいなと思ったんです」

そのまま建築学で大学院まで進み、内装設計施工の会社に就職した菱沼さんはテーマパークの外装の設計などに携わるようになった。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

世界一のオーダーメイド革靴

最寄りのICから【E20】中央自動車道「長坂IC」を下車
現在、完全オーダーメイドのビスポークは受注をストップさせている菱沼さんだが、再開されたら世界に一足だけのオリジナル靴を作ってもらいに八ヶ岳を訪れてみては。森のなかの落ち着く工房で靴を作ってもらう経験そのものが、思い出に残るに違いない。アウトドアに詳しい菱沼さんに周辺のおすすめを聞いて、自然を堪能できるスポットを回るのも楽しい。
Khish the Work

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。