未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
ver276

八ヶ岳の森で生まれる「作りたい」衝動 “革靴が好きすぎる男”が世界一になるまで

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.ver276 |10 March 2025
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#2「作りたい!」欲求を満たし続けた幼少期

「ときどき無性に『なにか作りたい!』という欲が湧いてくる子どもだったんですよね。それでなにかを作ると、ふー……とおさまる、みたいな感じで」

1994年、神奈川県横浜市で生まれた菱沼さんは、クリエイティビティの塊のような子どもだった。どんなものを作っていたのか聞いてみると「うーん、特にこれってものがあるわけじゃないんですけど……」と言いながら、折り紙、粘土、彫刻、木工などさまざまな例を挙げた。

日曜大工やDIYが好きだった父親を手伝っていたため、幼少期からノコギリやトンカチにも抵抗はない。バイオリン作りにも挑戦したといい、木を削って作ったエレキバイオリンは実際に音が出るまで作り込んだ。

菱沼さんが特に夢中だったのは、レゴブロック。2歳頃から中学生まで誕生日やクリスマスのプレゼントはすべてレゴで、空き時間はとにかくずっとなにかを作っていた。一度説明書のとおりに作ったらバラして、ほかのブロックと混ぜてオリジナル作品を作っていく。

一番の大作はなんだったのだろう。うーんと少し悩んだあとに「ライフルですかね…」と呟いた菱沼さんに思わず「えっ?」と聞き返してしまった。聞けば、レゴブロックには積み上げていくタイプのほかに「レゴ テクニック」という機構的なシリーズがあり、小学生だった菱沼さんはそれを駆使して実際に弾が撃てるライフルを作ったという。

「あとは、目がよかったんですよね。単純な視力の話ではなくて“細部を見ている子”だったと母から言われたことがあります」

菱沼さんの母親が覚えているのは、幼稚園児だった菱沼さんが本屋の大量の本のなかから新書の背表紙にある小さなロゴを指差して「うちに同じ柄の本があるね」と言ったというエピソード。そのほかにも、夏休みの恒例だったキャンプや山登りで、菱沼さんが自然のなかから虫を見つけ出すのが得意だった記憶もある。

「歩きながらじっと地面を見ていると、虫が見えるんですよね。葉っぱの裏にいても影で『あ、あそこにいる』ってわかるんです。今考えると、あれは大量のレゴブロックの山から自分が思い描いたパーツを探していて身についたのかもしれないなって」

レゴブロックで、そんな力が身につくとは! もちろんレゴで遊んだすべての子がそうなるわけではないものの、さまざまなものづくりのなかで手先だけでなく目まで鍛えられて今の菱沼さんがある。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

世界一のオーダーメイド革靴

最寄りのICから【E20】中央自動車道「長坂IC」を下車
現在、完全オーダーメイドのビスポークは受注をストップさせている菱沼さんだが、再開されたら世界に一足だけのオリジナル靴を作ってもらいに八ヶ岳を訪れてみては。森のなかの落ち着く工房で靴を作ってもらう経験そのものが、思い出に残るに違いない。アウトドアに詳しい菱沼さんに周辺のおすすめを聞いて、自然を堪能できるスポットを回るのも楽しい。
Khish the Work

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。