未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「店主こだわりの一杯」ではなく「一人ひとりの飲みたいもの」が並ぶ店 世界から注目される盛岡の小さなコーヒー店の軌跡

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.274 |10 February 2025
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#11「コーヒーの入り口」のような店でありたい

雲南省との縁は、新たな展開へとつながった。

長澤さんは今、「フリーズドライコーヒー」の商品化にチャレンジしている。フリーズドライコーヒーは、濃縮したコーヒー液を凍結し、乾燥させてつくるインスタントコーヒー。お湯を注いだらすぐに飲める手軽さが特徴だ。

雲南省で、フリーズドライの高い加工技術を持つ企業との出会いがあったのだという。

「専用のラボがあって、すごく丁寧にテストを繰り返していました。工場も見学させてもらい、サンプルの製作をお願いしたんです」

まだ味を確かめていないため商品化できるかは未定だが、「フリーズドライでおいしいコーヒーができたら、すごく面白いですよね」と話す長澤さんから、ワクワクが伝わってくる。

「日本にもフリーズドライの技術はありますが、うちのような個人店と取引するには規模が大きすぎます。その点、今回出会った方は小ロットで作ってくれると言うのです。『長澤さんのために』と柔軟に対応してくれるので、こうして挑戦できます」

2025年1月、13周年を迎えた「Nagasawa COFFEE」。客がひとりもこない……と嘆いていた店は、日本を代表する店へと発展を遂げ、いまや海外から「『Nagasawa COFFEE』が焙煎した豆を取り扱いたい」という声も届くようになった。

だが、長澤さんの想いは変わらない。提供したいのは、一人ひとりがおいしいと思うコーヒーと、ゆっくりとコーヒーを楽しめる空間だ。

「よく、2号店は出さないんですかと言われることがありますが、正直考えていません。自分たちの世界観をしっかり表現できる1店舗があればいい。店を訪れてくれた人に楽しんでもらうことがいちばんです。なんとなく立ち寄った人や、ふだんコーヒーを飲まない人にも『コーヒーっていいな』と思ってもらえる、入り口のような店でありたいです」

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