未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「店主こだわりの一杯」ではなく「一人ひとりの飲みたいもの」が並ぶ店 世界から注目される盛岡の小さなコーヒー店の軌跡

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.274 |10 February 2025
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#8日本人唯一の選出「コーヒーの仕事を通じて世界を変えている20人」

2019年のある朝、いつものようにメールをチェックしていると、「Congratulations!(おめでとう!)」という件名のメールが目に飛び込んできた。

英文で届く迷惑メールが多かったため、ゴミ箱に入れようとしたが、ちらっとメールアドレスを見ると「sprudge.com」とある。メールを開いてみると、自分が「コーヒーの仕事を通じて世界を変えている20人」に選出された、というようなことが英語で書かれていた。

それを読んでもまだ信じられなかった。なにしろ、まったく心当たりがないのだ。

長澤さんは試しに、「ありがとうございます」と返信してみた。もし返ってきたメールに金銭的な要求があれば、詐欺メールだと判断するつもりだった。

「でも『アンケートを送るので回答をお願いします』と返信がきて、その時やっと『あ、これは本当なんだ』とわかりました」

メールを受け取った数日後、店に立ち寄った常連の女性客に長澤さんがこの話をすると、彼女が「本当に選ばれたんですか!」と異様に驚いている。よくよく話を聞いてみると、「私が推薦文を送ったんです」と言う。

その推薦文にはこう書かれていた。

<盛岡市ではコーヒーが幅広い世代に愛されており、深煎りで濃い味の飲み物が好まれてきました。しかしNagasawa COFFEEには、伝統的なコーヒーに加え、フルーティーで軽やかで、時には独特な味わいのコーヒーもありました。長澤氏のコーヒーはトレンドに左右されません。彼はアフリカから台湾まで、世界中を旅して知識を深め、学んだことすべてを地元の人々に表現しながら、独自のコーヒーの世界を築いてきました。小さな町のバリスタも、コーヒーの世界を変え、影響を与えられると考えています>

「そのお客さんもまさか本当に選ばれると思ってないから、推薦文を送ったことを私たちにも伝えていなかったらしいんです。英語が堪能な方なので、SPRUDGEに返送するアンケートは彼女にサポートしてもらいながら作って送りました」

「コーヒーの仕事を通じて世界を変えている20人」に、アジアからは選ばれたのは2名。そのうちのひとりが長澤さんであり、日本人で唯一の選出だった。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

世界から注目される盛岡の小さなコーヒー店の軌跡

最寄りのICから【E4】東北自動車道「盛岡IC」を下車
1日目
まずは「NAGASAWA COFFEE」へ。浅煎りから深煎り、カフェラテ、エスプレッソなど、ラインナップが充実したメニューのなかからお気に入りの飲み物を見つけよう。スイーツセットを注文して、広々とした店内でゆったり過ごすものおすすめ。その後は、「盛岡城跡公園」を散歩して、盛岡の自然や歴史を楽しむ。
NAGASAWA COFFEE
盛岡城跡公園
2日目
ニューヨーク・タイムズの「2023年に行くべき52カ所」に選ばれた盛岡市内を散策しよう。国指定重要文化財の「岩手銀行赤レンガ館」や「もりおか啄木・賢治青春館」を巡り、夜は夜景を眺めに岩山展望台へ。盛岡冷麺や地ビールである「ベアレンビール」など、盛岡ならではのグルメも堪能してみては。
もりおか啄木・賢治青春館
岩山公園

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。