未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「店主こだわりの一杯」ではなく「一人ひとりの飲みたいもの」が並ぶ店 世界から注目される盛岡の小さなコーヒー店の軌跡

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.274 |10 February 2025
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#10海外での講演で、まさかの事態に

2024年12月、長澤さんは中国の雲南省にいた。それも、アカデミー賞の授賞式かと見紛うほどの立派な会場のステージ上に。

長澤さんの目の前には、1000人の聴衆。最前列には、雲南省保山市長やニカラグア共和国の大使などのVIP客が、ズラリと並んでいた。

中国最大のコーヒーの生産地である雲南省と岩手県は、「友好交流協力協定」を通じて交流を深めてきた歴史がある。政府間をはじめ、農林業、青少年育成、観光、経済貿易など協力関係は多岐にわたる。

2024年10月には、ニューヨーク・タイムズで紹介された同店に雲南省のコーヒー事業者たちが注目し、視察に訪れていたそうだ。

これらの縁から、「雲南省でコーヒーの仕事をする人たちに向けて講演をしてほしい」と、長澤さんに依頼があったのだ。

「ちょっとしたホールで、数十人を前に喋るだけだろうと思っていたんです。講演前日に会場を見に行った時、『うそだろ、やばいぞ』ってすごく焦りましたよ」

当日は、朝ごはんが喉を通らなかった。原稿の棒読みにならないよう、ギリギリまで声を出して練習して、内容を頭に叩き込んだ。

本番では同時通訳が入る。ちょっと噛んでしまったとしてもバレることはないだろう。大事なのは、いかに堂々と振る舞うかだ。そう自分に言い聞かせて、長澤さんは壇上にあがった。

10分間の講演では、SPRUDGEやニューヨーク・タイムズなどの世界的メディアで紹介された経緯、日本のコーヒー文化や産業の動向について話した。

最後に、「コーヒー生豆の生産者、コーヒーを焙煎し提供する人、それを飲む消費者、すべての人が満足できることがいちばんの理想で、目指すべきことだと思っています」と締めると、会場は盛大な拍手に包まれた。「すごくよかったです」「また来年も来てください」そう口々に言われた。

雲南省での講演の様子(写真提供:長澤一浩さん)

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

世界から注目される盛岡の小さなコーヒー店の軌跡

最寄りのICから【E4】東北自動車道「盛岡IC」を下車
1日目
まずは「NAGASAWA COFFEE」へ。浅煎りから深煎り、カフェラテ、エスプレッソなど、ラインナップが充実したメニューのなかからお気に入りの飲み物を見つけよう。スイーツセットを注文して、広々とした店内でゆったり過ごすものおすすめ。その後は、「盛岡城跡公園」を散歩して、盛岡の自然や歴史を楽しむ。
NAGASAWA COFFEE
盛岡城跡公園
2日目
ニューヨーク・タイムズの「2023年に行くべき52カ所」に選ばれた盛岡市内を散策しよう。国指定重要文化財の「岩手銀行赤レンガ館」や「もりおか啄木・賢治青春館」を巡り、夜は夜景を眺めに岩山展望台へ。盛岡冷麺や地ビールである「ベアレンビール」など、盛岡ならではのグルメも堪能してみては。
もりおか啄木・賢治青春館
岩山公園

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。