未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「おれ」は私であり、あなたは「おれ」である 南相馬「おれたちの伝承館」から愛をこめて

文= 川内有緒
写真= 森下征治
未知の細道 No.258 |10 June 2024
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#2時間が止まった場所を訪ねて

中筋さんの本職は、カメラマンである。

「ファッション誌とかツーリング誌、バイク雑誌でも仕事してきて。あとは広告写真とか映画のスチールを撮ったり。子どもをふたり育てて、ある程度のことはしたし、ああ、もうこのあとは好きにやろうって思って、福島に通うようになって。頻繁に通い始めたのは震災の2年後くらいだから2013年かな」

それまで福島はバイクでは走り回ってきたが、浜通りは縁が薄かったという。その中筋さんが浜通りに興味を持ったのは、まさに原発事故があった土地だったからだ。

「もともと僕は廃虚とか産業遺構とかも撮ってて、軍艦島とか鉱山とかも撮り尽くしちゃって、じゃあちょっと海外行くかっていうんで、その初っ端がチェルブイリだった」

チェルノブイリの原発事故から21年後の2007年、特にコネクションもなかったため、ネットでコーディネーターを探し、通訳とドライバーを手配した。ウクライナ人の大男3人と古い車に乗りこみ、立ち入り禁止ゾーンにも入った。チェルノブイリでは30キロ圏内で人が暮らすことは許されてこなかった。それは、除染を行い住民を少しずつ地域に還らせるという日本の対応とは、真逆のものだ。

「何がすげえかって、とにかく1986年から時間が完全に止まっちゃってること。時間が止まった場所は見慣れていたはずなんだけど、なんかチェルノブイリの時間のフリーズの仕方っていうのは、社会体制の時間がそのまま止まってるみたいで、いまは存在しない『ソビエト連邦』がそのまま残ってた。やっぱり原子力災害ってものすげえんだなって」

そんな彼でも、2011年の3月に起こることはまったく予想がつかなかった。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

南相馬「おれたちの伝承館」から愛をこめて

最寄りのICから【E6】常磐自動車道「南相馬IC」を下車
1日目
小高駅周辺のスポットを散策。
「おれたちの伝承館」で作品をじっくり鑑賞。その後は、駅周辺の書店&カフェ「フルハウス」やギフトショップ「KIRA(キラ)」を訪ねて散策。双葉屋旅館も同じ通りにあるので、そのまま宿泊するのもおすすめです。
おれたちの伝承館
2日目
相馬野馬追が行われることで雲雀ヶ原祭場地や相馬小高神社などの歴史的スポットを訪ねる。お天気がよければ、島崎海浜公園で海を眺め、時間があれば、双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」へ。
東日本大震災・原子力災害伝承館

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。