北海道斜里町
流氷の地、知床半島の入り口にある斜里町。そこに入場無料の美術館がある。多くの人を魅了してきた山の文芸誌『アルプ』から生まれた美術館である。30年以上愛されてきたその美術館と流氷の景色眺めて、私が考えたこととは。
最寄りのICから【E39】旭川紋別道「遠軽IC」を下車
最寄りのICから【E39】旭川紋別道「遠軽IC」を下車
流氷を見たことがあるだろうか?
オホーツク海の北で生まれる流氷はゆっくりと南下し、1月下旬から2月にかけて知床半島にやってくる。知床を含むオホーツク地域は流氷が見られる日本唯一の地で、世界では最南の地である。
私は51歳にして、初めて流氷を見ていた。今年は流氷の当たり年とのことで、海は見渡す限り真っ白だ。勝手に氷山みたいなものを想像していたが、もっと平らで雪原のようにも見えた。せっかくなので見るだけでは飽き足らず、「流氷ウォーク」なるアクティビティにも参加した。寒いのが大の苦手なので、決死の覚悟である。
しかし、分厚いドライスーツを着込めば、まったく寒さは感じなかった。港の方角へ向かうと小さな灯台があり、そこから先はもう流氷の上だ。
そっと足を載せると、氷は硬くしまっている。
おおっ。意外と歩きやすい。
一歩、二歩と進むうち、どこまでも行けそうな気持ちになってきた。しかし、もちろん固くても氷は氷。急に割れたり、流れていったりすることもあるから油断できない。
「よかったら入ってみませんか?」
インストラクターの方が指すのは、氷の割れ目にできた穴。恐ろしく黒々とした水を湛えていて、「水深は10メートルくらいです」。
思い切ってドボンと入ると、ドライスーツの浮力で全身がふわーっと浮いた。
なにこれ、無重力ってこんな感じ?ラッコのようにぷかぷかするうちに、何か大きなものに抱かれているような気持ちになった。
そんな流氷がやってくる地、知床半島の付け根あたり小さな町に、30年以上も続く美術館がある。入場は無料。
それが「北のアルプ美術館」である。