未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
254

北海道斜里町

流氷の地、知床半島の入り口にある斜里町。そこに入場無料の美術館がある。多くの人を魅了してきた山の文芸誌『アルプ』から生まれた美術館である。30年以上愛されてきたその美術館と流氷の景色眺めて、私が考えたこととは。

文= 川内有緒
写真= 三好大輔
未知の細道 No.254 |10 April 2024
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
〇〇県〇〇市

最寄りのICから【E39】旭川紋別道「遠軽IC」を下車

【E39】旭川紋別道「遠軽IC」までを検索

最寄りのICから【E39】旭川紋別道「遠軽IC」を下車

【E39】旭川紋別道「遠軽IC」までを検索

#1流氷にあいた穴に飛び込む

流氷を見たことがあるだろうか?
オホーツク海の北で生まれる流氷はゆっくりと南下し、1月下旬から2月にかけて知床半島にやってくる。知床を含むオホーツク地域は流氷が見られる日本唯一の地で、世界では最南の地である。

私は51歳にして、初めて流氷を見ていた。今年は流氷の当たり年とのことで、海は見渡す限り真っ白だ。勝手に氷山みたいなものを想像していたが、もっと平らで雪原のようにも見えた。せっかくなので見るだけでは飽き足らず、「流氷ウォーク」なるアクティビティにも参加した。寒いのが大の苦手なので、決死の覚悟である。

しかし、分厚いドライスーツを着込めば、まったく寒さは感じなかった。港の方角へ向かうと小さな灯台があり、そこから先はもう流氷の上だ。
そっと足を載せると、氷は硬くしまっている。

おおっ。意外と歩きやすい。

一歩、二歩と進むうち、どこまでも行けそうな気持ちになってきた。しかし、もちろん固くても氷は氷。急に割れたり、流れていったりすることもあるから油断できない。

「よかったら入ってみませんか?」

インストラクターの方が指すのは、氷の割れ目にできた穴。恐ろしく黒々とした水を湛えていて、「水深は10メートルくらいです」。

ドライスーツを着て流氷にあいた穴に入ると、体がぷかぷか浮かんだ。

思い切ってドボンと入ると、ドライスーツの浮力で全身がふわーっと浮いた。
なにこれ、無重力ってこんな感じ?ラッコのようにぷかぷかするうちに、何か大きなものに抱かれているような気持ちになった。

そんな流氷がやってくる地、知床半島の付け根あたり小さな町に、30年以上も続く美術館がある。入場は無料。
それが「北のアルプ美術館」である。

このエントリーをはてなブックマークに追加

TOPICS

  • 開高健ノンフィクション賞を受賞
    ニュース 川内有緒さんが開高健ノンフィクション賞を受賞

    川内有緒さんの書籍「空をゆく巨人」が、第16回 開高健ノンフィクション賞を受賞しました!受賞作品の詳細と合わせて、川内有緒さんのドラぷら「未知の細道」の掲載記事を紹介します。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。