長野県上水内郡
「第5回全国創業スクール選手権」では最高賞の経済産業大臣賞を受賞し、「Japan Cider Awards 2022」のテイスト部門では最高ランクの星3つを獲得。味にも取り組みにも注目が集まるリンゴのお酒、シードル醸造所があると聞き、長野県の飯綱町を訪れた。
最寄りのICから【E18】上信越自動車道「信州中野IC」を下車
最寄りのICから【E18】上信越自動車道「信州中野IC」を下車
信州中野ICを降りて車を走らせること数分。四方に伸びる枝に緑の葉を満員電車のように茂らせた木が、あっちにも、こっちにも。「これはもしや?」と思い、立ち寄った喫茶店の店員さんに尋ねると、「あ、リンゴの木ですよ」とあっさり判明した。
そう、ここは「日本一のりんごの町」を目指す長野県の飯綱町。
リンゴ栽培が盛んな長野県内でも有数の産地で、全国に流通するリンゴの約100個に1個が飯綱町産なんだそう。
町内には、リンゴの歴史や栽培方法が展示されたリンゴの博物館「いいづなアップルミュージアム」や、リンゴづくりについて学ぶ農業塾「信州いいづなりんご学校」がある。リンゴづくし!
その飯綱町に2019年、リンゴのお酒「シードル」の醸造所ができた。全国初の廃校を活用した施設で、その名も「林檎学校醸造所」。かつて子どもたちが通った赤い屋根の校舎の一角で、いまでは年間1万4000リットルのシードルがつくられている。訪れた人は、併設の直営店「RINGOTO」でシードルを購入できるほか、8月から翌年3月にかけての醸造シーズン中は窓から作業の様子を見学できる。
林檎学校醸造所でつくられたシードルは、「Japan Cider Awards 2022」のテイスト部門で最高ランクの星3つを獲得。2023年5月に発表された日経新聞の土曜版『NIKKEIプラス1』の国産シードルランキングでは、堂々の4位にランクイン。
取材の数週間前、自宅で初めて飲んだシードルは、なんというか、華やか! グラスに注ぐと、初夏を思わせる甘酸っぱい爽やかな香りがした。一口飲むと、リンゴの自然な甘みを追いかけるようにすっきりとした酸味が口に広がる。「お、おいしい!」。スイーツ感覚で飲んでも、食事と合わせてもいい。
味にも廃校活用の取り組みにも注目が集まる醸造所をつくったのは、飯綱町のリンゴ園「一里山農園」の4代目、小野司さん。東京で20年近く働いた後、生まれ故郷にUターンし、シードル醸造所を立ち上げたという。
小野さんに話を聞くため、取材前夜にも楽しんだシードルの味わいを反芻しながら19年ぶりに小学校の門をくぐった。