神奈川県横須賀市
横須賀市の「SYOKU-YABO農園」は、無農薬野菜たっぷりのごはんが食べられる自然あふれる農園レストラン……なのだけど、至る所から音楽が流れ、銅像や楽器が置いてあり、ライブステージまで? この不思議な空間を、なにもないところから作り上げた、ひとりの男の物語を聞いた。
最寄りのICから【E16】横浜横須賀道路「横須賀IC」を下車
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「もうね、ジャングルだったよ」
神奈川県横須賀市、大楠山の麓にひろがる農園レストラン「SYOKU-YABO農園」のオーナー・眞中やすさんは、初めてこの土地にやってきた時のことを、そう振り返る。
全敷地面積の記録はなく、ぜんぶでどのくらいの広さなのかはわからない。わかっているのは、目の前に広がる土地をレストランにするためには、このジャングルをどうにかしなければならない、ということだけだった。
戦後に満州からやってきた人々が田畑として利用したと言われているこの場所は、もともと埋立地になるはずだった。住民からの反対運動の末にその計画が中断し、未開発のまま放置されて15年以上。生い茂る木々や雑草で、地面がどこまで続いているのか、敷地の形状もなにもわからなかったという。田んぼや畑だったと聞いていたものの、一体どこにある……? 「土地があるなら、そこで農園レストランをやりたい」と、手を上げたやすさんだったが、ジャングルを目の前にして立ち尽くした。
「こんなところ、無理だろ……」
邪魔な木々をどけながら、手押しの草刈機で雑草を刈っていく。何日もかけて少しずつ刈り進めていくと、だんだん地形が見えてきた。何かにぶつかってみれば段差だったり、急に坂道が始まったり。全貌が見え始めた頃、やすさんの胸は昂り始めていた。
畑を作って育てた野菜を、あの辺りにキッチンを建てて調理しよう。その横にステージを作ればアーティストのライブができる。テーブルの周りを、子どもたちが走り回っていて――。やすさんの脳内に、今のSYOKU-YABO農園のイメージがわっと浮かんできて、草刈機を握る手に力が入った。
「この場所は、絶対におもしろくなるぞ!」