未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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感性を鍛えろ! 「食の野望」を持つ、ある男の開墾物語

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.228 |27 February 2023
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#7ジャングルとの出会い

「食の紹介人」として、レストランを作って料理をふるまいたい。そう考えていたやすさんのところに思わぬ朗報が飛び込んできたのは、40歳目前の年だった。高校時代の友人から「会社で持て余している土地を活用してくれる人を、誰か紹介してくれないか」と頼まれたのだ。頭のなかで、ある企画書の内容が一気に蘇った。

実は以前、知人からの依頼でレストランの立ち上げを任されていたやすさん。条件はうさぎのキャラクター『ピーターラビット』をテーマにするというもので、やすさんは「ピーターラビットならレストラン内に畑を作って、そこの野菜を調理して……」という構想を練っていたという。ところが、あと一歩のところで運営会社が倒産。レストランが実現することはなかった。

「日本中を回って食材を探したり、メニュー開発したり。お願いするシェフまで決まっていて、すごく良いところまで行ったのに頓挫したのが悔しくて。絶対におもしろいレストランになるのに! ってずっと心残りだった」

それが、友人から「土地がある」と紹介されたときに蘇ってきたのだ。大楠山の麓にある広い広い土地。この場所なら、あのとき考えていたことが実現できるかもしれない……。

「友達には『それ、俺にやらせてよ』って伝えてさ、ピーターラビットの時に作った企画書をベースに、このSYOKU-YABO農園の構想を作っていったんだ」

キャラクターの世界観に合わせていた企画を、日本の宝を広く伝えるものへ。「野菜や伝統調味料を広めて守る」という“食の野望”が込められた農園レストランの名前は『SYOKU-YABO農園』となった。

そして2009年6月、やすさんはジャングルの開墾を始めたのだった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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