「食の紹介人」として、レストランを作って料理をふるまいたい。そう考えていたやすさんのところに思わぬ朗報が飛び込んできたのは、40歳目前の年だった。高校時代の友人から「会社で持て余している土地を活用してくれる人を、誰か紹介してくれないか」と頼まれたのだ。頭のなかで、ある企画書の内容が一気に蘇った。
実は以前、知人からの依頼でレストランの立ち上げを任されていたやすさん。条件はうさぎのキャラクター『ピーターラビット』をテーマにするというもので、やすさんは「ピーターラビットならレストラン内に畑を作って、そこの野菜を調理して……」という構想を練っていたという。ところが、あと一歩のところで運営会社が倒産。レストランが実現することはなかった。
「日本中を回って食材を探したり、メニュー開発したり。お願いするシェフまで決まっていて、すごく良いところまで行ったのに頓挫したのが悔しくて。絶対におもしろいレストランになるのに! ってずっと心残りだった」
それが、友人から「土地がある」と紹介されたときに蘇ってきたのだ。大楠山の麓にある広い広い土地。この場所なら、あのとき考えていたことが実現できるかもしれない……。
「友達には『それ、俺にやらせてよ』って伝えてさ、ピーターラビットの時に作った企画書をベースに、このSYOKU-YABO農園の構想を作っていったんだ」
キャラクターの世界観に合わせていた企画を、日本の宝を広く伝えるものへ。「野菜や伝統調味料を広めて守る」という“食の野望”が込められた農園レストランの名前は『SYOKU-YABO農園』となった。
そして2009年6月、やすさんはジャングルの開墾を始めたのだった。