時はバブル経済期で、「世の中を金で動かす人たちがいること」を実感せざるを得ない時代でもあった。きらびやかな世界がある一方で、アジア蔑視や差別的な社会もたしかにある。その両方を見ながら、やすさんは真実を探していた。これらの根っこにあるのは一体なんなんだろう。人間の本質ってなんなんだ……?
「そうなった時、『人が嫌がる仕事をしよう』と思ったんだ。きらびやかな世界とは対照的な仕事に就くことによって、なんか世の中が見えるんじゃないかって」
それから5年間、30歳になるまで、やすさんはゴミ収集車に乗ってゴミの回収をしたり、産業廃棄物の中間処理業として手作業でゴミの分別をしたり。船の積荷をひたすら運ぶ、体力的にきつい仕事もしたという。
その5年間で何が見えたんですか、と聞いてみると「あそこにいる人たちが礎となって世の中を成り立たせているってことだね」と返ってきた。
「彼らと一緒に仕事をしてからは、なにをするにしても彼らの存在を探すようになった。居酒屋で飲んでいても、誰が作ったのか、誰のおかげで自分は今お酒が飲めているのかって、無意識に考える。世の中のどこかに、ああいう見えない仕事をしてくれる人がいるから、自分が成り立つってことがわかるんだよ」
SYOKU-YABO農園で食事をしていると、いろいろな人の存在が見える。園内の畑で野菜を作っている人、調味料を作っている人、食事を作る人、準備をする人、食べる人……。「誰かのおかげで今、自分は生きている」と、無意識に感じさせられる。それはきっと、私たちの暮らしを成り立たせている誰かがいることを、やすさんが身を持って知っているからなのだろう。