さて市役所から「りんりんスクエア土浦」に戻ると、「ル・サイク」の中の自転車を自由に駐輪できるブースに、かなりヘンテコな形の大きな自転車が置いてあった。おそらく寝て漕ぐタイプの自転車なのだろうか? テレビや雑誌で見たことはあるけれど、実際にこの目で見たのは初めてである。しかも赤い旗までなびかせている。
傍に長髪で長身の男性がスマホを眺めて佇んでいたので、きっとこの自転車の持ち主に違いないと思い、突撃インタビューを試みるべく、思い切って「すみません」と声をかけてみた。すると顔を上げたその男性は、予想外に外国の方だった!
おっと、これは予定変更しなきゃ……と、私はかなり拙い英語で「エクスキューズミー? イズ ディス バイシクル ユアーズ? キャンナイ シュート イット?」と聞いてみた。すると彼はにっこりして、写真を撮らせてくれた上に、いろんな話をしてくれた。
スペインからこの自転車とともに日本を旅しているというこの男性、今はしばらく土浦の街に滞在しているらしい。今日はちょうどりんりんスクエア土浦に立ち寄って、サイクリングの情報をチェックしたり、サイクリンググッズを見ているところだったというわけだ。
「りんりんスクエア土浦」ができるまえの土浦だったら、こうしてスペイン人のサイクリストと自転車について語ることもなかったかもしれない。いやそれよりも、初めて会う人たちと一緒に、土浦の路地裏を走ることもなかっただろうな、と私はふと思った。いつの間にか土浦の街が「サイクリングの基地」として、機能し始めていることに、気づいたのだった。
私がそれまで知っていた土浦とはちょっと違う、新しい町へと、土浦は少しずつ変わっているようである。そして自分も今日1日で、自転車で走ることが楽しくなり始めていた。
帰り際、大澤さんと井上さんに「今度来るときは一人で自転車を借りてサイクリングしてみたいんですけど。私でも霞ヶ浦一周できるでしょうか?」と聞いてみると二人からは「霞ヶ浦一周はショートコースでも90キロありますからね〜、きついですよ〜!」という返事が返ってきた。
うーん、確かに今日やっと15キロ走ったばかりの私には、90キロのコースは、まだきついかもしれないなあ……。でも走りながら感じた霞ヶ浦から吹いてくる風は、本当に気持ちが良かった! よし、次回、土浦くる時までに、もっと体力をつけておこう。そしてかならず霞ヶ浦を一周してみよう! と私は心に誓ったのだった。
松本美枝子