未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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めざせ!日本一のサイクリングの街・土浦

路地裏から湖までを巡る自転車の旅

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.123 |10 October 2018
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#8世界中のサイクリストたちの基地を目指して!

 さて市役所から「りんりんスクエア土浦」に戻ると、「ル・サイク」の中の自転車を自由に駐輪できるブースに、かなりヘンテコな形の大きな自転車が置いてあった。おそらく寝て漕ぐタイプの自転車なのだろうか? テレビや雑誌で見たことはあるけれど、実際にこの目で見たのは初めてである。しかも赤い旗までなびかせている。
 傍に長髪で長身の男性がスマホを眺めて佇んでいたので、きっとこの自転車の持ち主に違いないと思い、突撃インタビューを試みるべく、思い切って「すみません」と声をかけてみた。すると顔を上げたその男性は、予想外に外国の方だった! 

 おっと、これは予定変更しなきゃ……と、私はかなり拙い英語で「エクスキューズミー? イズ ディス バイシクル ユアーズ? キャンナイ シュート イット?」と聞いてみた。すると彼はにっこりして、写真を撮らせてくれた上に、いろんな話をしてくれた。
 スペインからこの自転車とともに日本を旅しているというこの男性、今はしばらく土浦の街に滞在しているらしい。今日はちょうどりんりんスクエア土浦に立ち寄って、サイクリングの情報をチェックしたり、サイクリンググッズを見ているところだったというわけだ。

なんとこの自転車で長崎まで行ったこともあるという。

 「りんりんスクエア土浦」ができるまえの土浦だったら、こうしてスペイン人のサイクリストと自転車について語ることもなかったかもしれない。いやそれよりも、初めて会う人たちと一緒に、土浦の路地裏を走ることもなかっただろうな、と私はふと思った。いつの間にか土浦の街が「サイクリングの基地」として、機能し始めていることに、気づいたのだった。
 私がそれまで知っていた土浦とはちょっと違う、新しい町へと、土浦は少しずつ変わっているようである。そして自分も今日1日で、自転車で走ることが楽しくなり始めていた。

 帰り際、大澤さんと井上さんに「今度来るときは一人で自転車を借りてサイクリングしてみたいんですけど。私でも霞ヶ浦一周できるでしょうか?」と聞いてみると二人からは「霞ヶ浦一周はショートコースでも90キロありますからね〜、きついですよ〜!」という返事が返ってきた。
 うーん、確かに今日やっと15キロ走ったばかりの私には、90キロのコースは、まだきついかもしれないなあ……。でも走りながら感じた霞ヶ浦から吹いてくる風は、本当に気持ちが良かった! よし、次回、土浦くる時までに、もっと体力をつけておこう。そしてかならず霞ヶ浦を一周してみよう! と私は心に誓ったのだった。

次回は、霞ヶ浦一周を目指す!
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未知の細道 No.123

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。