未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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めざせ!日本一のサイクリングの街・土浦

路地裏から湖までを巡る自転車の旅

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.123 |10 October 2018
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#7土浦市の取り組み

 さあ、楽しかった今日のツアーは解散だ。教習所の先生たちに飛び入り参加させてもらったお礼を言って別れ、大澤さん、井上さんとともに土浦市役所に移動して佐々木さんと東郷さんにお話を聞くことにした。土浦市役所は「りんりんスクエア土浦」から徒歩30秒、つまりなんと駅の目の前なのだ! 駅前の再開発事業に伴い、数年前に駅前に移転したばかりだ。

 「りんりんスクエア土浦は、ちょうどいろんな事業が重なってできあがった施設なんです」と東郷さんが教えてくれた。それまで茨城県にもともとあった筑波山周辺と霞ヶ浦周辺のサイクリングロードを茨城県の事業として合体させる話が、平成28年の秋に持ち上がった。茨城県内を結ぶ全長180キロにも及ぶ、日本最長のサイクリングロード、「りんりんロード」の誕生である。
 さらにちょうどJRも駅ビルを、土浦市も駅周辺の再開発を行っていた。そして官民一体となって「りんりんロード」に合わせた日本初のJR駅直結型サイクリング拠点施設として「りんりんスクエア土浦」をオープンさせることになったのであった。

 以前は土日の駅前は、人通りが少なくなり、すこし寂しくなっていた土浦市。しかし3月に「りんりんスクエア土浦」がオープンし、官民一体となって「りんりんロード」やまちなかでの様々なサイクリングツアーなどを行ううちに、各地からサイクリストたちが土浦へとやってくるようになった。半年が経った今では、週末のまちなかでサイクリストを見かけない日はないです、と佐々木さんと東郷さんは言う。

「私は生まれてからずっと土浦のまちなかに住んでいるのですが、最近では家族も、自転車に乗っている人が増えたねえ、と言いますね」と佐々木さん。確かに今日の散走ツアーでは、シニア世代を中心に、町の人たちから「いってらっしゃい」とか「今日のサイクリングは何のグループ?」などと声をかけられることが何度もあった。自転車に乗る人が増えてくれることはもちろんだが、自転車に乗らない人が、サイクリストたちに温かな眼差しを向けてくれるのは、市外からのリピーターが増えることにつながるだろう。今日のような地元企業向け散走ツアーは、このように町の人全体にサイクリングの取り組みを知ってもらう狙いもあるのだろう。

 「次は、となりまちの筑波大学の留学生向けに土浦を知ってもらう散走ツアーを企画しているんですよ」と東郷さん。ルートの選定はサイクリングの専門家である「ル・サイク」の大澤さんと井上さんが考えつつ、留学生たちに土浦の町の良さを伝えるためのポイントは、市役所の佐々木さんと東郷さんが考えるのだ。今日もこのインタビューが終われば、4人で次の散走ツアーの打ち合わせを行うのだという。

 さらに東郷さんはこんなことも教えてくれた。
「いま市では自転車が楽しいだけでなく、心身とも良いことを証明するために、職員20名がモニターとなって、ル・サイクと自転車メーカーの協力のもと、自転車通勤プログラムを行っています。自転車通勤の効果を測定しているところなんですよ」
 佐々木さんもその20名のうちの一人だ。「自転車で市役所に通うのがすっかり楽しくなってしまって、勤務中に雨が降ると、あーあ、今日は自転車を置いて帰らなければいけないのか……、とがっかりしてしまうんです」というくらいに自転車通勤にハマっているそうだ。心の効果はすでにばっちり出ているようである。
 生まれた町にずっと住んで、まちなかにある職場に自転車で通って働くなんて、確かにステキな毎日だ。まるでヨーロッパなど自転車が盛んな国のライフスタイルみたいである。それに目の前には完璧なサイクリング拠点施設まであるのだ。ちょっと羨ましい。

土浦市政策企画課の佐々木倫也さん(左)と東郷裕人さん(右)
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未知の細道 No.123

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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