未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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めざせ!日本一のサイクリングの街・土浦

路地裏から湖までを巡る自転車の旅

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.123 |10 October 2018
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#3「散走」のためのレクチャー

かつては自転車競技の選手だった大澤さん。散走ツアーの先導を務める。

 さて今日の私は、土浦のサイクリング事情を体感するために、土浦市主催で、大澤さんと井上さんも企画に関わっている「散走ツアー」なるものに申し込んでいるのだ。「散走」という言葉は耳慣れないものだったが、土浦市のサイトに掲載されていた説明を読むと、どうやら私のようなサイクリング初心者でも参加できるサイクリングらしい。最新式のレンタサイクルと、昼食、コーヒー休憩がついているこのツアー、まちなかの16キロほどの距離を、集団で走るという。

 さて「散走」とは自転車メーカーが作り出した新しい言葉なのだそう。「自転車で走ること」が目的ではなく、「自転車を活用して」散歩するように、ゆっくりと自転車で目的地を巡り、「歴史や文化」に触れたり、「食」を楽しんだりする自転車を活用した新しい楽しみ方のことなのだ。今日の「散走ツアー」もゆっくりした速度で走るので、初心者や運動が苦手の人でも安心して参加できるプログラムである。使う自転車もスピードが出るスポーツタイプのものではなく、初心者でも簡単に乗れる、街乗り用のまさに「散走」向けの自転車なのだ。

  • 公道に出る前に大澤さんから、ヘルメットのつけ方やサドル合わせ、スタート、ブレーキの仕方など、安全な自転車の乗り方の指導を受ける。

 土浦市では「ル・サイク」と共に、今年度は年10回の「散走ツアー」を企画している。実は今日私が参加するツアーは、一般の人に向けたものとはちょっと違う、市内の企業向けに公募したものだ。市内の企業、つまり土浦に住む人たちにも、サイクリングのことをもっと知ってほしい、というねらいなのだ。そして今日応募してきたのは市内のとある自動車教習所。つまり参加するのは自動車教習所の先生たちのグループ、というわけだ。

 このツアーに応募することを決めた教習所の校長先生に、その理由を聞いてみると、インターネットで募集を知り、休日に行う会社のレクリエーションと教習所の宣伝を兼ねて参加した、とのこと。確かに7名の皆さんはお揃いの黄色いTシャツを着ていて、背中にはばっちり教習所名が書いてあった! 確かにこれは目立つかもしれない……。
 今日は1日、特別にこのグループに混ぜてもらって土浦の街中を走るのである。ル・サイクの大澤さん、井上さん、そして土浦市役所の佐々木さんと東郷さんも一緒だ。

出かける前に全員で集合写真!
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未知の細道 No.123

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。