未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
123

めざせ!日本一のサイクリングの街・土浦

路地裏から湖までを巡る自転車の旅

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.123 |10 October 2018
この記事をはじめから読む

#5風を切って土浦の街を走る!

 さて最初の休憩ポイント、上高津貝塚公園に向かって散走は続く。途中、坂が増えてきて、ちょっと大変だったところもあったが、無事に上高津貝塚公園にたどり着いた。走り出してから約5.5キロ、時間にすると、まだ30分くらいなのだが、自転車から降りると、汗がどっと吹き出てくる。思いの外、全身を使って走っているのだなあ! という感じだ。それは心地よい疲れでもあった。

  • 上高津貝塚公園では、貝塚や、復元した竪穴式住居などを見ることができる。(左)きつい坂道もギアチェンジして登りきる!(右)

 上高津貝塚公園でしばらく休憩してから、再び散走へ。急スピードではないけれど、散歩よりはずっと早い「散走」。路地裏を通り抜けると、不意に神社やお寺などでてきて、目に映る景色がくるくると変わっていくのも面白い。

 途中、お昼ご飯を食べに「定食レストラン ラフラフ」へ。すでにランチを食べに来ている常連客でいっぱいだった。ここの名物、ハンバーグ、コロッケ、海老フライが乗ったボリューム満点の「大人様ランチ」をいただきながら、参加者のみなさんにサイクリング前半の感想を聞いてみた。みなさんはほとんどが土浦やとなり町の在住だという。「普段、仕事でも生活でも車の運転ばかりでしょう。いま走ったところは路地裏が多くて普段車で通るところではないから、知らない道ばかりで面白いですね!」とみなさんが口を揃えた。

 昼食を終えて、散走を再開。このツアーでなければ、来ることはなかったかもしれない、静かな住宅街を走り抜ける。確かに教習所の先生たちが言うように、ふだんは知らない町に来ても車や電車などで行けるところ以外は、なかなか通らないものだ。なにしろ自転車で知らない住宅街を通ることはまず滅多にないので、目に映る景色は思いのほか目新しく、なんだが不思議な気分である。
 すると不意に前方に参加者の職場「土浦自動車学校」の看板が出てきた。声をかけると、みんなが「あ! そうだそうだ、ここにも看板を立てていたんだよなあ!」と喜んでいる。急遽みんなでちょっと止まって、記念撮影をパチリ。地元企業向け散走ツアーらしい、たのしい出来事だった。

 さらに3回目の休憩ポイント、「ニコニコ珈琲」へ。オーナー夫妻が切り盛りしているこの店は、「つちうらブレンド」をはじめとした自家焙煎の美味しいコーヒーが自慢のコーヒー専門店だ。そして夫妻はサイクリスト集団の立ち寄りにだいぶ慣れているようで、12名分のコーヒーとケーキをあっという間にテラスにサーブしてくれた。小学1年生の娘さんも、この日は可愛いスタッフとして、ケーキを配ったり、写真を撮ってくれた。

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.123

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。