夕方になると、舞子さんは慌ただしく発送の準備を始めた。収穫した野草を次々とビニール袋や箱に詰めていく作業が続く。
それを眺めながら、「これから野草を食卓に取り入れてみたいという人になにかアドバイスはありますか」と聞いてみた。
「まずは、本当にひとつでもいいから、何かの野草を使ってチンキ(野草をホワイトリカーに漬けたもの。化粧水などの基材になる)とかを作ってみること。すぐに食べようと思わずに、まずは入浴剤や化粧水などとして利用してみる。野草は野菜ではないから、摘んで食べるのはリスクが高いんです。だから、野生種はきのこと同じという感覚をきちんと身につけてから、食べることに挑んで欲しいなと思います」
野草と触れ合う最初の一歩として、青山や勝沼のファーマーズマーケットの舞子さんの店舗では、自分だけの入浴剤を作るコーナーも設けている。桃の花やヒバ、ヨモギやカキドオシ、シソ、みかんの皮などから、自分が好きなものを組み合わせて入浴剤をつくる。
「自分で選んで、自分で詰める、そのプロセスが大事です。たまに『自分に合いそうなものを選んで欲しい』と言われることもあるんですけど、やっぱり『わからないから』じゃなくて、とりあえずやってみるということが大事だと思うんです」
そう、野草は狩猟採取の世界。じっと待っていても何も起こらない。
まずは自分なりの一歩を踏み出すところから、すべては始まる。
川内 有緒